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明治桜花大学七不思議 4

   

《自称天才数学者の推理記録》の《番外編》の《明治桜花大学七不思議》の、〈その4〉です。
 大学の資料室で、黒岩盾男の写真を見ました。
 日露戦争の戦場で立っている姿です。
 写真だけからも、凄い迫力が感じられました。

 

* 七不思議 その4。

《黒岩盾男の銅像》

 明治桜花大学は、百年余の歴史があるので、多くの銅像がある。
 創立者を始めとして、いろいろと大学に貢献した者達の銅像である。
 大学の北東の隅にも、ひっそりと佇む銅像がある。
 シャツに着物、袴、そして角帯、という明治の若者の服装で、腕組みをしている。
 胸を張った、正々堂々とした姿なのだ。
 他の銅像は、二メートルほどの高さの台座に乗っている。
 だが、この銅像だけは、十センチほどの高さの台座に乗った全身像である。
 したがって、少し背伸びをすれば、像の頭まで、手が届く。
 この像の主は、黒岩盾男。
 創立者の先代の赤谷伯爵の忠実な部下であった。
 日露戦争で、無類の活躍をし、壮絶な戦死を遂げた勇士である。
 黒岩盾男は、顔の左側に火傷があり、鬼のような形相であったということだ。
 厳密に言うと、大学創立前の日露戦争で死んでいるので、大学に貢献はしていない。
 では、なぜ銅像があるのであろうか。

 黒岩盾男が陸軍大学校の学生であったとき、後年、明治桜花大学を創立する赤谷正九郎は、そこで教鞭を執っていた。
 ある日のこと、陸軍大学校の赤谷正九郎の部屋に、黒岩盾男が入ってきた。
「お話があります」
「何だ?」
「この前の、三角法の試験でありますが……」
「おお、それか。こちらから呼び出そうと思っていたところだ。丁度よい。お前、満点だったぞ」
 陸軍大学校であるから、教育の目的は、いかに軍隊を統率して、いかに作戦を立てて、いかに敵を殲滅するか、という事に絞られる。
 そのために、実地の演習が中心となるが、座学もある。
 教室に座って先生の話を聞く、という現在の学校のスタイルである。
 三角法も、そのような座学の一つであった。
 現在の三角関数。
 もちろん、単にサイン、コサインを覚えるのではない。
 どのくらいの角度で大砲を撃てば、どのくらいの距離に届くか、というようなことを計算するのである。

 

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