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明治桜花大学七不思議 7

   

《自称天才数学者の推理記録》の《番外編》の《明治桜花大学七不思議》の、〈その7〉です。

 

* 七不思議 その7。

 さて、ここまでで《明治桜花大学七不思議》は終わりである。
 六個しかないじゃないか、と思うかもしれないが、これには理由がある。

 昔、大学のOB達が〈公認〉とした《不思議》は五個であった。
 桜の花びらの数に合わせたのである。
 その五個が、どれとどれなのかは、分からない。
 この〈公認〉をしたのがいつの事なのか、OB達が誰なのかも、知られていない。
 ただ、以下に述べる事から、〈公認〉は、《旭桜会》が決めたのだろう、と推測することが出来る。

 《旭桜会》とは、文学部のOBの会である。
 もちろん、本居宣長の〈朝日ににほふ山桜かな〉から取った名称である。
 この会が作られたのが大正時代。
 大正デモクラシーという時代なのであろう、かなりの粋人や変人もいたそうである。
 例えば、浅井良太郎という人物がいた。
 彼は、出版社を経営していた。
 都々逸の集成や小唄の練習本など、江戸趣味の本を中心とする出版社であった。
 そして、『輓近百物語』を出版した。
 百物語とは、江戸時代から始まった、怪談を話す会である。
 百本の蝋燭を灯した部屋に、何人かの人々が集まり、順番に怪談を話す――。
 話が終わったら、蝋燭を吹き消す――。
 これを、順番に続ける――。
 最後の蝋燭が吹き消されれば、部屋は真っ暗になるのであるが、同時に、大きな怪異が出現する、とされている。
 そこで、百物語の会をするときには、わざと、九十九話で終わりにするのが習慣であった。
 百物語は、話をする会であるが、それを記録した本の出版も、さかんに行われた。
 浅井良太郎は、自分の出版社で百物語の本を出そう、と考えた。
 しかも、「百物語なんだから、九十九話でなく、百話まできちんと載せよう」として、百話が完全に入っている『輓近百物語』を出版したのである。
 その結果――。
 浅井良太郎の出版社は倒産し、彼は、極貧の内に死亡した。
 『輓近百物語』は、縁起の悪い本として、ほとんどが裁断されたそうである。

 

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