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緑色要塞 ルナ将軍の足跡

   

売れない記者の「俺」は、完全に行き詰まっていた。十年間勤務してきた地方紙が休刊ということで仕事を失い、さらに、ギャンブルが原因で、ヤバい筋から作った借金もあり、月末までに百万返さなければいけないという状況だった。

一か八か危機を打開するべく、「俺」は、旧日本軍かあるいは別の特務機関の基地があるという、X県のY山に入った。記者として使えそうなネタを取材しながら、何か価値があるお宝があれば拝借してしまおうという、二重の狙いがあったのである。

山歩きはほとんど素人の「俺」は、土地勘のない山に大苦戦するものの、転げ回ったことがきっかけで、何とかそれっぽい看板が掲げられた小屋を発見するのだが……

 

「まったく、ひでえトコに出ちまったぜ。同業者の話ってのも、案外アテにならんな」
 俺は、息を弾ませながら、ぶつぶつと呟いていた。
 辺りは真っ暗闇で、視界のどこにも明かりは見えない。
 耳に聞こえるのは、虫の鳴き声だけで、しかも夜になってから雲が出てきたらしく、月や星の光すら届かない。
(やっぱ、無理があったか……)
 慣れない山道につまずきそうになりながら、俺は後悔しかけて、やめた。
 今の俺には、誰かに頼るという選択肢はないのだ。
 俺は、大学を出てから十年、地方紙の記者をやっている。
 もっとも、地方紙と言っても、ミニコミに毛が生えたぐらいの規模でしかなく、当然、給料も安い。
 とは言え、会社付きである以上、安定した身分は保証されていたのだが、会社の経営自体が、俺の知らないところで行き詰まっていたらしく、今月いっぱいで廃刊だ、と、社長は言ってきた。
 こうなると、将来へ向ての計画は、全て台無しである。
 どこの雑誌も新聞も苦しい現状、他の出版社への再就職希望者は山ほどいるし、かと言って、今までのキャリアを白紙にして別の職を探すのも、かなり不利だ。
 さらに、俺は、就職事情とは別に、すぐにでも大金が欲しかった。
 理由としてはありきたり、借金返済だ。
 趣味のギャンブルに使う金を消費者金融から借りたのを手始めに、ズルズルと深みにはまってしまった。
 ヤバいところからもたっぷりと金を借りてしまったせいで、どうにも首が回らない。返すアテが見当たらないのだ。
「月末までに百万」
 闇金の男は、その一言だけを発した。
 返せなかったらどうなるかは、俺も記者のはしくれだから、大体は想像がつく。夜逃げなどという甘い手が通用しないことは間違ないだろう。
 もう、逆に闇金の事務所にでも盗みに入ってやろうか、などとヤケになっていた時、同業者、つまり記者仲間の噂話を聞いた。
「緑色要塞」という話である。

 

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