幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

射光 2

   

高校二年の夏
煩く鳴き喚く蝉の声と、世界が燃えるような暑さの中、逸人は人生最悪の日をむかえた。

親友と恋人。

その二つをいっぺんに失くしたのだ。

いや、違う。
壊したのは自分だ。

失ったあの日の残像を追う逸人の前に、ある日突然、嘗ての親友、隼が現れる。

「逸人……」

「……隼」

大勢の人が行き交う交差点で、瞳だけが絡み合う。
胸に棘を刺し合った俺たちに、いつかまた笑いあえる日は、来るのだろうか?

 

 それは高校二年の夏に喧嘩別れをして以来、ほとんど口を利くこともなく、卒業後は会う事もなくなっていた嘗ての親友、小倉隼だった。
 なんと声をかけていいのかわからない。
 最初から気付かぬフリが出来ればそれでもよかったのだが、お互いに顔を見合わせ確認し合ってしまった。まだ、お互いの中に消え残る熱がある事に気付かされてしまった。
 逸人の足は、まるで縫い止められたかのようにその場から動かない。隼も、それは同じのようだった。家路を急ぐサラリーマンや学生の群れに押されながら、二人はずいぶん長い間見詰め合っていた。
 喉が渇く。
 なにか、大事な事を言い忘れているような気がして、胸が痛んだ。だがその言葉がなんなのかわからない。喉まで出かかっている気がするのに、それが形にならない。しかしこのまま立ち尽くしている訳にもいかないと、逸人はやっとの思いで口を開いた。

「久しぶりだな」
「ああ」

 声をかけると、隼は静かに返事をした。あの夏以来、ちゃんと言葉を交わすのは初めてのような気がして、気持ちが上擦る。

 

-ラブストーリー


コメントを残す

おすすめ作品