幻創文芸文庫 (β)

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ラブストーリー

射光 3

   

親友の彼女を彼の知らないところで奪い、粗末に扱った。
そしてそれはいつしか彼の知るところとなり、俺と彼女と彼は、最低最悪の別れ方をした。

それは何年経っても抜ける事のない、心に突き刺さる氷の棘だ。

後悔を胸に、なにに情熱を燃やす事もなく生きる逸人の前に、ゲイの青年、片桐が現れる。
片桐はモデルで、カメラマンをしている逸人に、自分を撮ってくれないかと言った。

 

「笠原さん!」

 その数日後、帰宅しようと社を出てすぐ、どこからか声をかけられた。
 モデルの片桐有斗だ。
 日が落ちてきたオレンジ色の町に白いシャツが良く映える。

「仕事の話、断わったって聞いたけど……」
「だから?」
「それはやっぱりアレのせい? 笠原さんまだ怒ってる?」
「怒ってない」
「ホント?」
「ああ」
「それならなんで断わったの?」

 あの日、ぶしつけに押し付けられた行為に腹が立ち、一方的に殴り帰ってしまったというのに、片桐は怒る事もなく、むしろその態度は丁重で控えめだった。だからかもしれない、逸人も自然に答える事が出来た。

「キミのほうこそ、なんで俺に? カメラマンは他にもたくさんいるだろ、もっと腕のいい奴に頼めばいいんだ」
「アナタがいいんだよ」
「だからなぜ?」

 今度は逸人が訊ねた。数いるカメラマンの中で、自分はかなり下のほうだ。仕事だから、それなりのモノは撮るが、それだけで、とくにどこかで評価をうけた事もないし、他からそんな依頼もなかった。だから不思議だったのだ。まさかあの日の続きをしようという訳ではないだろうと疑問に思った。
 その問いに、片桐は少し微笑みながら静かに答える。

「僕がそこにいたからさ……」

 

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