幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

射光 4

   2013年9月17日  

あの日の過ちは、取り戻せない。
どんなに後悔しても、どんなに泣いても、彼も、彼女も自分を許さないだろう。

まるで自分に罰を与えるように、逸人は幸せと暖かさから目を背けた。
なにかに情熱を燃やす事すら、禁じてきた。

だが葛西はお前の撮る本物の写真を見たいと言ってくれた。
片桐はあなたに自分を撮って欲しいのだと言った。

思わぬ求めに、逸人は天を仰ぐ。

――俺は…… もう一度、なにかに情熱を傾けてもいいんだろうか?

 

 逸人はまるで昔の隼に話しかけるように、自分達の通った高校が取り壊されるのを隼と二人で見に行こうとするように、そんな気持ちで片桐に話しかけた。
 片桐は素直に頷く。

「うん、見たい」
「なら見に行こう、長野だろ? 今から行くと着くのは夜だな、片桐、仕事は?」
「あ、暫くないけど…… え? まさか今から行くの? 逸人さん大丈夫?」
「まずは現地行って、取り壊し前に、撮影許可とらなきゃなないし、時間はないかもしれないだろ、出来るだけ生きてた痕跡のあるうちに撮りたいんだ」

 見に行くとは、逸人にとっては撮りにいくという意味だ。それを聞いた片桐は慌てて立ち上がり、会計を済ませて出て行く逸人を追った。
 店から出ると、逸人は携帯を開き何処かへ連絡を入れている。どうやら編集長に報告がてら出張の許可を求めているらしい。

「撮りたい物があるんです、どうしても、葛西さんが言ってたような物が俺に撮れるかどうか、やらせてもらえませんか?」

 

-ラブストーリー
-


コメントを残す

おすすめ作品