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タカラくじ スターダム大作戦(後)

   

佐野は、鈴野の提案を受け、賞金十億円の、「スターダムチケット特等」の「当選者」になることを受け入れた。当たりくじを手に入れ、鈴野へと返還すれば、半額の五億円が入ってくるという大仕事である。もちろん、決して失敗は許されない。

そして一月後、話を引き受け、プレッシャーのかかる毎日を過ごしていた佐野は、ついに、当たりくじが到着するという連絡を受け、意気込んで街に出ていったのだが……

 

 鈴野の話を受けてからの一月、俺は完全に電話に振り回された生活を送るハメになった。
 いつかかってくるか分からない緊張から、慢性的な睡眠不足に陥り、また、普段使っていない電話を携帯する面倒臭さや、通信を逃さないため、外回りの仕事を選ぶ大変さもあった。
 もちろん、外に出たとは言っても、熱心に営業をこなすわけにもいかず、社内での評価は最低ランクまで落ちた。
 下手をすればクビになるかも知れない状況である。
「明日っ!? 本当なんですね? ついに来るんですねっ」
「ええ。色々ありましたが、最終日にねじ込ませるのが一番安全となったんです。連絡しなかったのは申し訳ないですが、よく我慢してくれましたね。雨宮ビル前売り場の一番くじです。くれぐれも遅れないように」
 だが、胃に穴が開きそうな不安や心配とも、今日でようやくおさらばだ。
「スターダムチケット」の最終日に合わせ、当選くじが届く手はずが、ついに整ったのだ。
 後は一番くじを入手できれば、「任務」は完了となる。
「並んだりしてないでくれよっ……!」
俺は、祈るように呟きながら、家の玄関を飛び出した。

 午後八時。街のメインストリートは、金曜日だということもあり、かなりの賑わいを見せていた。
 レストランの隣りにある、「雨宮ビル」の、一階部分を占めている宝くじショップにも、ぽつぽつと人の出入りがある。
 民営化以来、宝くじは、あらゆる合法的ギャンブルの最上位の座を占めつつある。
 単なる娯楽というより、文化的事業の活況を呈しているとさえ言えるのだ。
 だが、幸いなことに、深夜十二時まで自由にくじが買える店を前にして、明日の一番くじを待つ客の姿はない。
 つまり、無理して割り込んだり、情報漏れを心配したりはせずに済むということだ。
 俺は、行儀良く店の前に立ち、時を待つことにした。
 座り込んだりはしない。座っていると酔っ払いに間違われて、警備員や警察官に連行される危険があるからだ。
(落ち着け……)
 何食わぬ顔をして、俺は立ち続けた。水分は補充しない。トイレに行く手間を省くためだ。
 手にぶら下げているアタッシュケースを置いておけば、割り込み防止にはなるだろうが、完全ではない。
 横から入った、入らないで揉めるには、今の俺が置かれた状況はシビア過ぎる。だから、ここを動くわけにはいかない。

 

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タカラくじ スターダム大作戦<全2話> 第1話第2話

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