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ほめてのばす

   

学校を卒業してから運動不足を実感できた杉山は、新聞の折り込みチラシにあった、格闘技系ジムへ足を踏み入れる。

小さいが、活気あるジムの会長をしていたのは、杉山が、学生時代にいじめていた友人、八島 昭吾だった。昔に比べ、すっかりたくましくなった八島は、杉山を心底歓迎してくれた。

そして、杉山は、ジムに入会し、定期的に汗を流すようになる。八島は、そんな杉山を、常に変わらずフレンドリーな態度で褒めてくれていたのだが……

 

「あああ、だりいなあ、体が重い……」
 俺は、誰に言うでもなく呟いた。
 窓越しに見る太陽は、既に空の頂点にまで上がっていて、こちらとは正反対のやる気満々さを、周囲に見せつけている。
「まったく、うぜぇよな、課長の奴。金曜日だからって、てめえとなんか呑みたくねえんだよ」
 愚痴をこぼしてみても、気力がみなぎってくるようなことはない。 この一週間続いた残業に加え、昨日の飲み会が、俺の体力と余裕を完全に奪っていた。
 課長に半ば強いられて呑んだ、ちっともうまくない酒が、胃と肝臓にダメージをもたらしている。
 この土日を休息に充てて、全快するかどうかも分からない。
(この歳でオッサンかよ。勘弁してくれよな)
 俺は、ベッドから半身を起こしつつ、ため息をついた。
 四年制の専門学校を出て三年、まだ二十五歳だって言うのに、昔に比べて、明らかに体力が落ちている。
 筋肉が減って、脂肪が増えたので、全身の肉がだらしなく緩んでいるように見える。
 体も硬くなっており、ちょっと走っただけでも息が切れる有様だ。
 学生の頃は、こんなことはなかった。
 あまり熱心に部活に打ち込んだわけではなく、喧嘩三昧というほどでもなかったが、体力の減少を実感したことなどなかった。
 社会人の生活は、これほどまでに活力を奪うものなのだろうか。
(んんっ? 何だこりゃあ……)
 気力の沸かないまま、新聞を手に取ると、中に折り込まれていた一枚のチラシが床に落ちた。
 他のものよりも随分小さく、手作り感覚に溢れたものだったが、その分、インパクトがあった。

アイランドアカデミー、開校! サークル感覚でスポーツや格闘技を学べるスペースです。気軽に始められ、目標達成を目指すことができます。ダイエット、体力回復、競技力向上、等々、お気軽にお越し下さい……

 チラシには、そんな内容のことが書かれていた。文面からして、格闘技系のジムのようだ。
 場所は市内で、もっと言えば、歩いて二十分ぐらいの近所である。
 小さいジムだからか、月謝も三千円と割安だ。
 スパルタ式というわけでもなさそうだし、仕事に差し障るようなダメージを受ける心配も少なそうだ。
(ちょっと見学にでも行ってみるか……)
 週末の予定が一つもなかった俺は、暇つぶし半分に、「アイランドアカデミー」に足を運ぶことにした。

 

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