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「最強」は○○の始まり!?

   

ボクシングジムを運営する、清田 俊太は、高校時代の先輩でもある所属選手、内橋 勇が世界タイトルを取ったことを契機に、初めての自主興行開催を決断する。

ハイリスク、ハイリターンの興行開催を確実に成功させるため、清田は、やり手のプロモーターである、ショーと名乗る男に、クリーンではない「仕事」を依頼するのだったが……

 

「決まったああっ! 挑戦者内橋の物凄い右アッパー! ああっ、チャンピオン立てないっ。レフェリー、両腕を交差させたっ。試合終了、試合終了! やりました、内橋、ライト級の王者を奪取しました……」
 今年で三十五歳になる清田 俊太は、五十インチの大型TVで、録画した映像を見ていた。
 自分が経営している「清田ボクシングジム」の所属選手、内橋 勇が、ライト級の世界タイトルを手にした試合である。
 父親がジムを開設して三十年、親子二代の努力の末に、ようやく手にした栄光の瞬間というのは、何度追体験してもいいものだ。
「会長、おはようございます。先方と連絡が取れました」
 TVの電源を切ったところで、事務員からのメッセージが入ってきた。
 本当は、ちょっと昔のSF映画っぽく、映像モニターと一体化させたものがいいのだが、それはもう少し後の話になるだろう。
「分かった。ちょっとジムに顔を出してから行くとするよ」
 清田は、軽く応じて髪を整え、自室を後にした。

 遠方出身の選手の寮と清田の自室に使っている三階から降りていくと、賑やかな声と打撃音が入り交じった、ボクシングジム特有のサウンドが耳に入ってくる。
 野太い男たちだけではなく、女性や子供のかけ声も混じっている。
「はい、ワンツー、ワンツーからミドル! もっと腰入れて!」
「よし、いいよっ。しっかりグリップして、首相撲外させないで、膝入れて、そう!」
 二階では、老若男女が、トレーナーに促され、サンドバッグやミットに打撃を打ち込んでいた。
 パンチだけではなく、キックや膝も入れている。
 ボクシングというよりは完全にキックボクシングの動きだが、れっきとしたジムの「正式科目」であり、順調な経営を支える要因でもある。
 ジムが代替わりする少し前、いくつかの国際団体が、女性部門とともに、キックボクシング部門を発足させた。
 キックボクシングは、タイなどでは「タイ式ボクシング」として認知されている。
 だからボクシングの一部として、団体が参入しても筋が通るという話が浮上してきたのだ。
 日本国内ではあまり一般的な考え方ではないが、誰でも知っているような団体の王座が狙えるというメリットは魅力的で、いち早くカリキュラムを組んだ清田のジムは、他とは違うレベルの活況を呈している。
 ジムの階段をさらに下りて、一階のフロアに達すると、響く打撃音は、軽く素早いものになる。
 一階は、ボクシングフロアになっている。
 ガラス張りで外から丸見えのこのフロアでの練習は、ジムの看板であり顔でもある。
 プロやプロ志望者が、常にレベルの高い練習をこなしており、人数が少ない時間帯でも、熱気は凄まじい。

 

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