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ノンジャンル

鐘が鳴る時 ■誓い-天麻皇女 2

   

七海朔也に処罰を言い渡したのは、彼の上司であった。
なぜ今になって十年前のことを明かすのだろう? 皇女は不思議に思いながら、八角の話に耳を傾ける中、もう一度、十年前の出来事を思い返してみようと思い始める。

 

「ご存じでしたか。何も言わず、私を側に置いておりましたので、知らないと思っていました。なかなかどうして、十年前より統治者としての力量が備わっていたと見受けられる。いかにも、部下の失態に罰を与えるのは上官としての務め、その信念がありましたので、あえて厳しい罰を与えました」
「なぜです? 彼はあなたを慕っていました。尊敬していたました。あなたも、彼に期待をしていたと聞いています」
「だからです、皇女様。期待をしていたからこそ、失望は大きい。皇女様も、それは同じだと思っていましたが?」
「私が……?」
「この八角が知らなかったとでも? 皇女様とあやつの関係を――」
 八角の言葉に、内心ドキリと鼓動が大きく跳ね上がったけれど、極力表情を変える事無く、その言葉を聞くことが出来ていた自分に、少し驚いた。
 十年という月日の中で、私は人として女性としての成長より、統治者としての成長があったみたい。
 顔色を変えることなく、感情を出すことなく、淡々と相手の言葉を聞き、頭の中で無難な返答を考える。
 喜ばしいことだと八角は言うでしょうが、私はそんな自分の今が悲しい。
「あなたは、なんでもお見通しなのですね」
「皇女様あっての私ですので」
「任務に忠実ということでしょうか」
「その言葉、私には最高の褒め言葉にございます」
 深々と頭を垂れる八角に、私は自分の姿を重ねる。
 あと数年もすれば……いいえ、きっと「リセット」を実行してしまえば、私も彼と変わらない姿を他の人に見せることになる、予感がしてならない。
 八角以外の者も、喜ばしいご成長と言うでしょうね。
 人としての感情が欠落した統治者を、喜ばしいと称えていいのか、それは先人たちの行いを習い、私が常に抱いている疑問。
 そして答えが出せない問いかけでもある。
 感情は正しい判断をし損ねるという考えもわからなくはないけれど、それを欠いてしまったら、ただの独裁者ではないか……
 私は少しでもいい、人としての感情を忘れずにいたい。
 その為にも、あの人が傍にいてくれたら――と願う。
 側にいなくても、同じ空の下、同じ時代に生きていてくれたら――
 だから私の答えは――

 

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