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歴史・時代

黒い鷹・尼子秘帳 第一話

   

 江戸を舞台にしたハードボイルドです。
 時代設定は、寛政です。

 

 黒鷹精久郎は、ゆっくりと歩いていた。
 川崎から品川の宿へ向かう、東海道である。
 晴れているが、雲がかかっている。
 これから、天気が崩れるようだ。
 風がある。
 青い海の上には、白い帆を張った回船が動いている。
 黒鷹精久郎は、立ち止まり、空を見上げた。
 太陽の位置を見て、時刻を確認した。
 約束の刻限には、十分、間に合うだろう。
 海を見物するかのように、顔を左右にまわした。
 顔をまわしながら、さりげなく見る。
 行商人が、歩いてくるのを確認する。
 六郷川の渡しで、いっしょになった行商人であった。
 行商人にしては、旅の埃が少ない。
 行商人にしては、歩調が遅い。
 黒鷹精久郎の前に出ようとしない。
 つけているのではないか、という気がするのだ。
 黒鷹精久郎は、些細なことにも気を抜かない。
 ためしてみよう、と思った。
 どうせ、時間は十分にあるのだ。
 黒鷹精久郎は、茶屋に入った。
 看板には、『大当利』、『まる漬』とある。
 老婆が出てきた。
「いらっしゃいませ」
「うむ」
「名物、まる漬でよろしゅうございますか?」
 黒鷹精久郎は、頷いて、縁台に腰掛けた。

 

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