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個室ビデオ店「本性」

   

る格闘技サークルに所属する男、丸井は、今時ビデオだけを提供する個室ビデオ店に入り浸っていた。「本性」という仰々しい名のその店で、DVD化もされていない無数のB級以下の作品を観てニヤニヤするのを楽しみにしていたのだ。

しかし、サークルの活動費を使い込んだという言いがかりをつけられ、状況的にも気分的にも、ビデオ観賞どころではなくなってしまった。

このままでは、金を払っても悪さを認めたことになってしまうし、かと言って支払わなければ、それこそ「処刑」されてしまう。打開策は見出せなかった。

そんな風に思い悩む丸井に対して、「本性」の店主、樋口が、声をかけてきたのだった……

 

「ったく、しょうもねえよなあ……」
 俺は、ジュースを口元に運びながらぼやいていた。
 目の前のTV画面に流れているのは、俳優の挙動がぎこちない上にだらけている映画だ。
 古いビデオテープということで、かなり映像は乱れているが、鮮明な状態で観たいという人間が出て来るとは思えないレベルの作品だ。
 今、俺がいるのは、いわゆる個室ビテオ店の一室だ。
「本性」という不穏な名前を持つこの店は、現代にあって、本当にビデオしか置いていないという変り種だ。
 動画配信サービスはおろか、DVDすら置いていない徹底ぶりである。
 普通、そんな店に客など入ってこないように思えるのだが、意外にも盛況である。
 ここに行けば、DVD化もされていないようなB級以下の作品を見ることができることがマニアの人気を呼んでおり、さらに、店主の筆による辛辣な作品評と内情暴露が客の興味を引いているのだ。 グダグダでどうしようもない、撮影現場の内情を頭に入れつつ、セリフすらおぼつかないような作品を観ていると、何とも言えない感情がせり上がってくる。
 怒りと空しさが入り交じったような気持ちは、他ではなかなか味わえないものがある。
 俺も、そんな負の感情のせり上がりを楽しみにしているマニアの一人なわけだが、今日に限っては、怒りの気持ちが強くなり過ぎて、楽しむどころではなかった。
 俳優のひどい演技に、本気で苛立ってしまっている。
(ちっ……あの野郎。あざになるぐらい殴りやがって)
 その理由は、俺が所属している格闘技サークル内でのトラブルだった。
 いや、トラブルと言うより、一方的な難癖付けである。

 

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