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歴史・時代

黒い鷹・尼子秘帳 第二話

   

 江戸の地理は、『嘉永版江戸切絵図』を参考にしました。
 設定時代との修正はしてあります。

 

 次の日、黒鷹精久郎は、塚原道場へと行った。
 大山新八郎との試合のとき、立ち会いをしていた塚原駿郎が経営する道場である。
 偶然ではあるが、塚原道場は、黒鷹精久郎のいる瑞竹寺から、遠くなかった。
 瑞竹寺を出て、浅嘉町、元町と進む。
 加賀中納言の屋敷を左に見て、湯島の聖堂を目指す。
 つまりは、中山道を上っているのだ。
 湯島の通りから東竹町へ曲がった先に、塚原道場があった。

 堂々とした、大きな構えである。
 門人の数も多いのだろう。
 道場の門人らしい若侍が、玄関の前を掃除している。
 黒鷹精久郎が、その前に立った。
 若侍が聞いた。
「ご用ですか?」
「黒鷹精久郎と申します」
「はあ?」
「塚原先生に、約束のものを受け取りに来た、とお伝えください」
「先生は……、え、何と申された? 名は?」
「黒鷹精久郎」
 若侍は、顔色を変えて道場内へ走り込んだ。
 すぐに、門人たちが飛び出してきて、黒鷹を取り囲んだ。
 皆、刀を抜いている。
 黒鷹精久郎は、門人たちを見回した。
 斬り合いになったとき、誰を最初に倒すか。
 一番強いのは誰だ。
 一番弱いのは誰だ。
 玄関先という位置を、どう有利に使うか。
 黒鷹精久郎は、こうしたことを読みながら、言った。

 

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