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ラブストーリー

ピンクの聖夜に抱かれて 前編

   

出逢いは夏の終わり。森和実は酔った勢いでその日会った男の人とひと晩共にする。
目覚めて知る自分の失態を悔いながら数日後出勤すると、上司に中途採用の新入社員の世話を命じられて――

 

★勢いでやっちゃった

 仕事柄、どうしてもカレンダー通りに休めない私は、今年もやっぱり周りの友達とズレてしまい、半月遅れの夏休みを取った。
 あと数日で9月、もう夏休みとは言わないんじゃないかって思うけど、この数年、日本の夏は日々最高気温を更新していて、8月もそろそろ終わりだという今夜も、陽が暮れているのに30℃を切らない。
 少しでも早く家に帰りたい、その気持ちだけが私を動かしていると言っても過言ではないこの状況の中、会社を出てからまだ5分と経ってないのに、仕事用の携帯が鳴りだす。
『森か? 悪いけどさ、今から××ホールに向かってくれ』
「え? 私、明日から5日間の夏季休暇なんですけど?」
『知ってる。許可出したの誰だと思ってる。上司の俺だぞ。××ホールの手伝い終わったらそのまま帰って夏季休暇満喫していいからさ、頼むよ。手当も弾むし』
 弾むと言っても、現場出張手当なんてたかが知れてる。
 予定外の収入ラッキーと飛び上がれる程でもないし、その程度ではこの森和実様を動かせると思わないで欲しいわ。
『夏季休暇明けの出勤日、おまえ誕生日だろ。上司としてではなく個人的に欲しいものをプレゼントする。だから頼む、俺を助けると思って』
 うちの会社、社員同士の信仰を深める為と、仕事柄もあり、誕生日とかクリスマス、バレンタインにハロウィンとイベント事は欠かさずちなんだことをする風習がある。
 もういい加減、おめでとうと言われたくもない歳になる私の誕生日も例外ではなく、夏季休暇明けにバッチリ祝られてしまう。
 確かに、そろそろ私はいいよと愚痴ってはいたけど、そのご機嫌取りも含めた『プレゼント』てことね。
「……わかりました。私の欲しい物、高いですよ?」
『お、おう。大丈夫だ、任せておけ。今夜××ホールで演歌界大御所の最終公演が始まってる。で、そのお方が○○店で売ってる限定スイーツを御所望だそうだ。既に取り置きしてもらえるよう連絡済みなんだが、現場の連中、手が離せないらしくてな。頼む』
 そのスイーツを届ければ終わりって感じかな? だったらいいか。そんな感じで引き受けた、休暇前の仕事だったんだけど――

 

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