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歴史・時代

黒い鷹・尼子秘帳 第五話

   

 侍の所作については、黒澤明の『椿三十郎』を参考にしました。

 

 それから数日、黒鷹精久郎は、江戸の町を歩き回った。
 塚原道場四天王の残った二人、東上晋太郎と西野金四郎の顔は分かった。
 二人とも、尼子秘帳の事は、他者に話していない、という。
 言うまでもなく、その言葉が真実かどうかは、分からない。
 では、どうする?
 二人のこと、塚原道場のことを、外郭から調べることにしたのである。
 東上晋太郎は、安芸藩の侍であった。
 西野金四郎は、御家人であった。
 塚原道場は、塚原卜伝以来の新当流として、江戸でも名の知れた道場であった。
 こうしたことが分かった。
 また、瑞竹寺の円仁和尚からの伝で、いくつかの寺を訪れた。
 寺の住職なら、故事来歴に詳しい。
 それで、塚原道場にまつわる尼子秘帳のことを聞いたのである。
 だが、新しいことは分からなかった。
 そもそも、剣術では、流派ごとに、秘伝の巻物というのがある。
 尼子秘帳も、そういった巻物の一つであろう、としか思われていないのであった。
 尼子秘帳には、金山や銀山などの位置が書いてあり、そこに重大な価値がある、とは考えないのであった。
 同心の芥川行蔵の方が、はるかに鋭かったのである。
 それと、尼子秘帳を奪った者――。
 黒鷹精久郎は、同心の芥川行蔵を、訪ねた。
 もちろん、芥川行蔵が鋭かった、と褒めに行ったのではない。
 考えたことを話し、それを調べてもらおうと、頼みに行ったのである。
 芥川行蔵は、頷いて、言った。
「鋭いですな。調べてみましょう」

 

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