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ノンジャンル

年末恒例特番 怪盗VS探偵

   

「宮井さん、聞こえますかっ。館の外は、大変な状況になっていますけれども」
 司会者の声が鼓膜を打つ。
 慌てた風ではあるが、どこか余裕がある。その響きが、宮井に落ち着きを取り戻させた。
「恐らく『怪盗 水月』の仕業でしょう。この館には妖怪が住んでおり、人に危害を加えている、という風な根も葉もない噂をインターネットで流したのです」
 宮井は言い切った。
 実際にはそんな噂など聞いたこともないが、まことしやかに断言することが大事なのだ。
「インターネットでの噂、ですか。しかし、『水月』がそんな先進的な手を使ってくるとは……」
「彼も年々進化しているのでしょう。とは言え、狙いははっきりしています。騒ぎを起こして警備を手薄にし、その隙に宝を頂こうというのでしょう。ですが、安心して下さい。宝が置いてある部屋の守りを固めてある以上、『怪盗 水月』は手出しできません。……それでは、打ち合わせがありますので、失礼」
 宮井は、自信満々の態度を崩さず電話を切り、部屋を出た。
 すると、廊下に、桜田を見つけることができた。
 桜田は、周囲にちらりと視線を向けてから、こちらに歩いてくる。
「やあ、うまく行きましたな。準備が功を奏してくれて、良かったです」
「と、言うことは、あの若者たちは、桜田さんが?」
「ええ。間が持たないことを考えて、エキストラを雇っておいたんですよ。口が堅いのを選んでおきましたんで、その辺は心配ないでしょう」
 桜田は、宮井を安心させるように、にこりと笑ってから、瞬時に真顔に戻った。
「しかし、忘れんで下さいよ。どんな策を弄しても、結局は怪盗が来てくれなきゃ無意味なんだ。もう俺たちは手札を切って『不自然さ』を出しちまってる。後一時間、もし彼が来ないなんてことがあれば、宮井さん、責任問題になりますよ」
 小さな声でびしりと言い切り、桜田はどこかに去っていった。
(ヤバい、本当に何とかしねえと……)
 束の間、宮井に芽生えた安堵感は、完全に姿を消していた。
 桜田に言われるまでもなく、番組を成立させねばならないのは分かっているが、その保証はどこにもないのだ。

 

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