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年末恒例特番 怪盗VS探偵

   

 宮井の言葉に、桜田は顔色を変えた。
「ブレーカーって、おい、お前、まさかっ!」
「わざわざ詳細を言う必要はないでしょう。ただ、やらなければ、我々はアウトです。桜田さんだって、良くて左遷ですよね。生中継番組を不発にさせちゃったら」
「ぬうう……っ、だが、放送事故もんだぞ、カメラが入ってるところで照明を全部落とすんだからなっ。番組としては……」
「やれるんですか、どうなんですかっ!」
 宮井はもはや引けなかった。
 だが、桜田にしても、TV局の人間として、譲れない一線はある。
 声量こそ小さいが、真剣さに満ちたぶつかり合いだった。

トゥルルルル……

 その時、宮井の携帯電話が鳴った。宮井は会釈してから携帯電話を耳に当てる。
「どうしたっ……?」
「ああっ、宮井さん、大変ですっ!」
 電話の相手は、「隊長」の部下だった。心底から慌てた様子である。
「落ち着いて話してくれ」
「そ、そうですね、すみません。……さっきの連中が、ですね、石を投げ出しましてっ、『隊長』さんの頭に命中しちゃって」
「何だとっ、抗議者たちが投石!?」
 宮井が思わず叫ぶと、桜田は手振りとともに「知らないぞ!」と応じた。
 確かに、「仕事」で騒いでいるだけの連中が、投石などという手段を取るなんて、普通では考えられない。
「今、状況はどうなってるんだ!」
 宮井は、携帯を握りながら狼狽した。
「大混乱ですっ! 警備員たちは、抗議の連中と取っ組み合いを始めちまって、館を守ってるのは僕ぐらいしかいません!」
「『隊長』は!?」
「ぼ、僕は直接見てないですけど、空気を変えようと窓を開けた瞬間、ぶつけられたみたいです。その後、誰も姿を見ていませんっ」
「すぐ戻る。パニックにならずに待っていろよ!」
 宮井は携帯を切ると、全力で駆け出した。桜田も追ってくる。
「おっ、俺は知らねえぞっ。『企画』でガチの投石なんて、できるわけねえって」
「とにかく、現場を見に行ってみなきゃ始まりません!」
 二人は半ば言い争いをしながら、直通電話とカメラが付いている「自室」に戻ってきた。
 確かに、現場は大混乱になっていた。窓越しに、警備員と若者たちが揉み合っている場面が見え、いくつものカメラが、食い入るように光景を接写している。
 イベントを見ている観客たちの表情にも、バラエティ番組を楽しんでいるのとは違う、緊張感が漂っている。
「ちっ、違うっ、俺が呼んだのは、こいつらじゃない……!」
 外の光景を見ていた桜田が、震える声で呟いた。
「都合が悪くなったら知らんぷりかっ」
 宮井は思わず怒りを爆発させかけたが、一方で、もっと重要な「証拠」を見つけていた。
 血痕である。赤黒い模様が点々と続いている。良く見ると部屋の外にまで達しているようだ。
「失礼っ」
 宮井は、呆然とする桜田を置いて、血痕を辿っていった。
 出血量は少ないが、目で確認できるぐらいのレベルはキープされていて、金庫部屋に向けて続いていた。
 宮井は、血の痕を頼りに、館の中で一番大きなドアを勢い良く開いた。

 

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