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鐘が鳴る時 ■誓い-天麻皇女 5

   

刑が実行される直前、皇女は朔也と会うことができ、対になっている剣の片方を託す。
この剣には迷信があり、嘘か真かわからないその迷信を信じてみることにする。
戻って来るという誓いをたて、皇女の腕の中から消えた朔也――
その朔也が消えた後、八角が姿を見せ……

 

◆◇◆◇◆

「何しに来た」
 確認と確信を抱き、私が朔也と再び会えた時、彼は驚きの表情から次第に悲しげな顔を見せながら、そう口にした。
 言葉そのものはとても冷たいのに、口からでた言葉は複雑で、彼の胸の内全てをさらけ出していたと思う。
 時を彷徨う刑が執行されるとしたら、あの場所しかないと勘が当たっていた事にホッとしていた私は、彼にどんな顔をしていたのでしょう。
 彼の前で泣く事だけはしない、それだけはしてはいけないと気丈に振る舞うことを心掛けていたけれど、実際はわからない。
 再び会えた場所は、浮遊都市の一番下、もっとも地上に近い場所。
 そこにはありとあらゆる歴史の記述などが保管されている場所と言われていたけれど、実際足を踏み入れたのは、私もはじめてだった。
 魔法陣というのでしょうか……以前魔法使いが世界を旅する物語を読んだ時、似たような図形が描かれていたのを覚えていたので、それに近いものだと思う。
 その中心に朔也がいて、周りを数名の処刑人と見届け人が囲む。
 その中に八角の姿はなかったけれど、皆顔を隠していたので、紛れていたのかもしれない。
「あなた様のような方が来られる場所ではない」
「さよう、早々に立ち去られよ」
「いずれ統治者となる者が、罪人の刑を見るなど……」
 口々に私の行動を非難する声が響くけど、肉声というよりは作りものの声に似ていて、彼は人ではなく、人に作られたロボットなのかもしれない、そんな疑念を抱きつつ、私は出来る限りの威厳を出しつつ、声を響かせた。
「誰に対し意見を言っているのですか? 私はいずれ、統治者となる一番近い位置にいるのですよ、言葉を慎みなさい。その私が、罪深き者に慈悲を言うのはいけないことですか?」
「そのような前例がありませんので」
「では、その前例を私が作ります。その者と話をさせてください」
 本当はこんな言い方をしたかったわけじゃない。
 力で従わせるなんて、したくない。
 でも、これから先、私の描く世界の在り方を現実とするなら、それも必要となってくる。
 その時、私の側にいてくれるのは、いったい誰なんだろう。
 それが朔也だったらいいのに――そう手の中にある物に祈りを込め、現実となる為の誓いをここで告げる。

 

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