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幻影草双紙35〜アルバイト〜

   

 たとえアルバイトでも、仕事は仕事です。
 報酬を貰う限り、手を抜いてはいけません。

 

 佐々木幸雄は、シティホテルのコーヒールームに座っていた。
 テーブルには、アフタヌーンティーのセットが置いてある。
 定宿にしている、名古屋駅に隣接するホテルである。
 佐々木幸雄は、ぼんやりとコーヒールームの雑踏を眺めながら、3つのことを考えていた。
 その一つは、マヤコンの映画第2作のこと――。
 もう一つは、長谷川淑子の演歌の新曲――。
 そして、お笑い芸人引き抜きの戦術――。
 映画は、脚本の手直しも終わったし、オーディションも進行中、まず順調。
 そろそろ派手な宣伝を始めるか。
 新曲は、作曲家が難癖をつけているので、威しをかける必要がある。
 生意気な行動は、許さない。
 問題なのは、お笑い芸人の件。
 向こうのプロダクションも海千山千だから、緻密な戦術を作らなければならない。
 絶対に引き抜いてやる。
 こうしたことを考えながら、コーヒールームの中を見ていたのである。
 そして、こちらを、チラチラと見ている男を発見した。
 大柄な男である。
 今をときめく佐々木幸雄なので、見られることには慣れていた。
 だが、その大男の雰囲気が、なんとなく不気味なのであった。

 佐々木幸雄の名刺には、〈(株)ササキ・エージェンシー 代表〉とある。
 だが、そのような名刺よりも、芸能界のナポレオン、という方が分かり易い。
 現在、飛ぶ鳥を落とす勢いの、芸能界のプロデューサーなのであった。

 

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