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幻影草双紙36〜ビンから現れた魔神〜

   

 さらに、千夜一夜物語の余伝です。

 

 男は浜辺を歩いていた。
 周囲を見る。
 海は、ひたすら青い。
 空には一片の雲もない。
 太陽が、ギラギラと輝いている。
 太陽の強烈な熱が、男の肌を焼く。
 目は、まぶしい。
 口の中はカラカラである。
 足に力が入らない。
 もう駄目だ、と思う。
 絶望なのだ。
 いっそ、死んだ方がましかもしれない。
 男は、ため息をつき、もう一度周囲を見て、思っていることを口に出した。
「このアラスカの海岸で……、砂が焼き付き、灼熱の太陽が……。まるでアラビアの海岸だ……」
 男は、もう一度ため息をついた。
(そもそもは……)
 肩を落として、足を引きずって歩きながら、そもそもの始まりからを、ゆっくりと思い直してみる。
 そもそもは、インド軍の誤動作が始まりであった――。
 インドと中国は、長年、国境紛争をしているのだが――。
 その国境地帯で、紛争がこじれてしまった――。
 局地戦闘やむなし、と判断したインド軍の地区司令官は、大砲を発射した――。
 普通火薬の砲弾を発射するはずだったのだが、砲弾の選択ミスで、核弾頭が付いた砲弾を発射してしまった――。
 中国軍の基地が、一瞬にして蒸発した――。
 怒った中国が、核ミサイルをインド各地へ発射する――。
 その中の一発が、ベンガル湾を遊弋中のアメリカ空母に命中した――。
 アメリカの報復攻撃――。
 これで、全面的な核戦争となった――。
 千載一遇のチャンスと見たテロリストや独裁国家は、化学兵器や生物兵器を無制限に使った――。
 かくして、空気中には、放射能やら毒物、それに細菌が蔓延した――。
 これだけなら、人類の半分は助かったかもしれないのに――。
 偶然が重なった――。
 偶然ながら、太陽で異変が発生したのだ――。
 その影響で、太陽系のバランスが崩れて地軸が変化した――。
 オゾン層が崩壊し、大気の温度は一気に上昇した――。
 こうしたことを思い出して、男は、また、ため息をついた。
(アラスカの海岸が、アラビアの海岸のようになったのだ……)
 男は、あえて太陽を見た。
 どぎつく照りつける、灼熱の太陽である。
 目が焼ける。
(人類は、どのくらい生き残った? 1割? もっと少ないだろう……)
 言い知れぬ孤独にさいなまれながら、独り言をいう。
「人間の誤動作と、自然界の偶然……、それで……、どうしたらいいんだろう……」
 考える力もなくなってきた。
 もう、駄目だ。

 

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