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歴史・時代

黒い鷹(二)・巖頭孤鷹 第三話

   

「なるほど。貴公が黒鷹精久郎か」
「お眼にかかるのは、始めてだな」
 吉田吉次郎が、薄ら笑いを浮かべて、言った。
「顔つなぎ、ということで一献。どうかな?」
「酒は飲まない」
「では、一服?」
「それも結構」
「用件だけにするか。で、何の用だ?」
「そちらの方で用があるのではないのか?」
 さすがに江戸家老である。
 静かな声で、言った。
「ない。あれは、もう済んだことだ」
「ほう? もう少し物事に執着する方と思っていたが」
「執着しているのは御家の事だ。
 御府内で斬り合いをしたことが御公儀に知られそうになり、もみ消すのに、えらい苦労をした。
 これ以上は算盤が合わない。あの事は、もう、蓋をして土に埋めてある」
「分かった」
「それを確かめに来たのか?」
「別な事だ。最近、書画骨董を売り出したと聞いたが」
「巴屋が言ったのか。口の軽い奴め」
 吉田吉次郎は、納得が行った。
 巴屋から一番近い町屋は、ここなのである。
 だが、巴屋と黒鷹精久郎は、どういう関係なのだ。
 これを考えながら、吉田吉次郎は、言った。
「今、萩家には金がない。一両、いや一文でも欲しい」
「だから、先祖代々伝わる書画骨董を売りに出した?」
「さよう」
「あの中に、宮本武蔵の掛け軸があったのをご存じか?」
「宮本武蔵?」
「荒海の巖に鷹が留まっている絵だ」
「ああ、覚えている。宮本武蔵が描いたとは、巴屋の見立てか?」

 

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