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ノンジャンル

食毒師を倒せ

   

早食い世界チャンピオンの塩谷 秀樹は、悩んでいた。ある勝負を軽い気持ちで引き受けたのだが、そこでは、なんと毒入りの料理を平らげなければいけないというルールが課せられていたのだ。

対戦相手の坂田は、「食毒師」と称されるほどに毒には強く、普通に戦っては万が一にも勝ち目はなく、そして塩谷が負けたら、対戦相手側に一千万円を支払うという取り決めまで交わされていた。

しかし、塩谷の口から絶望的な状況を聞かされた。親友の三井 順二に、諦めの色はなかった。勝負に勝つための三井の秘策とは……?

 

「なんだって、そんなバカな試合を受けたんだっ!」
 俺が難題の顛末を話すなり、親友 三井 順二は、悲鳴のような声を上げた。
 当然だ、と、思わないでもないが、頭ごなしに言われるのが嫌で、ついつい反論を試みてしまう。
「だ、だって、しょうがねえじゃねえか。食い物に関しての勝負なんだぜ? 負けるわけないと思うだろ。しかも、ハンデは十倍、一千万の元金で、勝てば一億ってんだからよ」
「怪しいと考えなきゃダメだろっ。何の備えもなしに、世界チャンピオンに勝負を挑んでくる素人なんて、いるわけがない」
 三井の容赦のない指摘に、俺は低く呻いた。
 俺、塩谷 秀樹は、早食いの世界チャンピオンだ。
 どんな食べ物でも早食いの枠内なら、世界でもトップクラスに入れるし、大食いでも、国内だったらチャンピオンレベルの力は持っている。
 だから、見知らぬ大富豪からふいに勝負の申し出が来ようと、何があろうと、「飯を食う」ことでなら、負けるはずがないと思っていた。
 だが、俺が勝負を受けた後に発表された内容は、予想をはるかに超えるものだった。
 食べるもの自体は、普通のフランス料理のフルコースで、まったく問題はなかったのだが、内容がまずかった。

 毒、である。

 勝負の場で出される料理には、猛毒が含まれている旨が明記されていたのだ。
 青酸カリ、コブラの体液、キノコ等々、種類は様々だったが、いずれも洒落にならないものばかりで、普通に食べたら、死なないまでも、KOは必至という厳しさだ。
 つまり、今回の勝負は、飲み食いの速さではなく、毒への耐久性を競うものだったというわけだ。

 

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