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ノンジャンル

充足プロジェクト

   

高校三年生の七瀬 純一は、将来の目標はおろか、昼食を何にするかすらうまく決められないほどの優柔不断な性格で、まったく将来に向けての目標を定められていなかった。そのせいで、両親からも愛想を尽かされつつあった。

受験が間近に迫ったある日、街を歩いていた七瀬は、見知らぬ女性から声をかけられる。彼女は、森田 月子と言い、自分の作り出した発明品、「満足玉」のモニターになってくれと、七瀬に依頼してきた。「満足玉」は、持ち主が「満足」できる物事を自動的に見つけ出し、知らせてくれるというすぐれものだという。

空腹で仕方がなかった七瀬は、とりあえず、「満足玉」が指し示したという、駅前の立ち食い蕎麦屋に入ってみることにしたのだが……

 

「ああ、お腹減ったなあ……」
 夕焼けを背に浴びながら、僕はフラフラと街を歩いていた。
 体に力が入らない。朝に軽くパンを食べてから、六時間以上も歩き続けているのだから、当然と言えば当然だ。
 お金がないわけじゃない。財布には、二千円入っている。
 間近に迫る大学受験からの息抜きとして、駅前にまで足を伸ばしたわけだし、食べるのを楽しみにもしている。
 ただ、どこに入っていいか、決められないでいるのだ。
 ハンバーガー屋に入ろうと思うと、通りの向かいにあるカレー屋が気になってしまうし、カレーを食べようとすると、パスタの方が胃に優しいかなとためらってしまう。
 結果、駅前をうろつき回るだけで、空腹の度はどんどん増していく。もちろん、満足感なんて得られるわけがない。
(はあ……)
 何の躊躇もなく店の中に入っていく人たちを見ながら、僕はため息をついた。
 食事に限らず、僕は何事も決心できない。極度の優柔不断なのだ。
 進路も、将来の夢も、まったく決められないでいる。
 中学の時も、専門的に学びたいことが見つからなかったから、普通科の高校に進んだのだけど、高校でも、将来の目標は見出せなかった。
 部活に入ったこともなければ、課外授業に熱心に取り組んだ経験もない。
 ただただ、流されていくだけの十八年間を過ごしてきた。
「大学に進みたいのはいいが、ほんの少しでも自主性と言うか、意欲を見せなさい。いや、進学しなくても、バイトでもいい。とにかくやる気を出さない限り、私たちも応援できない」
 と、いうようなことを、既に両親からは告げられている。
 つまり、本気で何かをやる気にならない限り、大学の学費は出してはくれないだろうし、場合によっては家にも置いてくれない事態に至りかねないわけだ。
 もちろん、取ってつけたような理由を口に出してみたが、まったく納得してくれなかった。
 要するに、今の僕は、「親の欲目」をもってしても、処断せざるを得ないほどに、「決める」力が欠けているのだ。
 このままではヤバいことぐらいは分かっているのだが、では、どうすればいいのかがまったく見えてこない。
 優柔不断は、僕を食事からも遠ざけてしまっている。

 

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