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歴史・時代

黒い鷹(三)・阿吽仁王 第七話

   2014年3月7日  

「斬りむすぶ太刀の先こそ地獄なれ、たんだ踏みこめ先は極楽」

柳生宗厳

 

 同心の芥川行蔵は、美濃国戸田家の内情を、調べ始めた。
 何か、揉め事があるのではないか?
 痺れ薬の南蛮象狩が必要となるような揉め事である。
 揉め事があるのなら、次は、痺れ薬の南蛮象狩を買ったのは、美濃国戸田家の誰か?
 これを調べなければならない。
 こうしたことが分かるまで、黒鷹精久郎は、動くのを止めた。
 大刀阿仁王丸強奪は、赤柄組の仕業であり、赤柄組の首領は三岸鎌之助であることは、分かった。
 すぐに、三岸鎌之助を斬っても、いい。
 だが、小刀吽仁王丸の方との繋がりが分かるまで、三岸鎌之助を斬ることを、控えているのだ。
 もちろん、無益に日を過ごしていたのではない。
 鍛錬を、欠かさない。
 市川真間浅茅村より届いた、『本草綱目』を読んだ。
 また、火傷の治療をした。
 そして、本所深川へ出向いていた。
 本所深川の小名木川沿いに、五本松という名所がある。
 その五本松の先、猿江町に、古い剣術道場がある。
 以前は、念流の日向忠平の道場であった。
 この日向道場に、三年ほど前、赤柄組の三岸鎌之助が、道場破りに来た。
 日向忠平は、負けてしまった。
 師範が負けてしまっては、もう、お終いである。
 門弟たちは、ちりぢりに散ってしまった。
 それ以来、日向道場は、赤柄組の根城となっているのである。
 こうしたことを、黒鷹精久郎は、芥川行蔵から聞いた。
 それで、猿江町を歩き回り、日向道場を探っているのである。
 黒鷹精久郎が調べたところ、赤柄組の構成員は、七人であった。
 大刀阿仁王丸強奪の時、黒鷹精久郎が数えた人数に一致する。
 他に、赤柄組の名を後ろ盾に、乱暴を働く小者や中間が数人いるが、それは問題にならない。
 赤柄組の城ともいえる日向道場にたむろするのが、七人なのである。
 他に、頭巾で顔を隠した武士が、ときどき、日向道場に出入りをしている。
 頭巾で顔は見えない。
 羽織の紋は桔梗であった。

 

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