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ノンジャンル

正しさの味

   

山中に作られた、とある集落。その「街」の中で、灰色の目をして、足の悪い「僕」は、ひどい迫害を受けていた。
「街」での多数派を占めているのは、「金髪の人々」で、「僕」たちには何の決定権もなかった。権力を握っている「緑目団」の連中は、変わった外見や内面を持つ人々を、公然と叩きのめしていた。

だが、一方で、「僕」は、傷薬を差し入れる老看守と巡り合ったりもしていた。

いつ果てるとも知れない苦悶の日々を送る「僕」だったが、ある日の作業中、空から褐色の肌をした逞しい男たちが降りてきて、状況は一変した。「金髪の人々」も、「緑目団」も、空から降りてきた男たちにまったく太刀打ちできず、打ち倒されていく。

だが、「支配者」がいなくなった「僕」たち「街」の人間に待っていたのは、安寧ではなく、今まで予想もし得なかった、一つの命令だった……

 

「おい、起きろ! 灰色野郎! いつまで寝てやがるんだっ!」
 僕の意識を、夢から現実へと、野太い罵声が引き戻す。
 慌てて上体を起こしかけたところに、横から拳が飛んできて、僕は、脱出しかかったベッドにめり込む。
 ほとんどクッションのないベッドは、衝撃を吸収するにはあまりにも不十分で、衝突した側頭部には、木の板の感触がしっかりと残った。
「がっ、は……!」
 僕は呻きながら時計を見た。
 午前四時半。
「学校」で定められた起床時刻には、まだ二時間も早い。けれど、反論はできない。
 文字で書かれた規則はどうあれ、灰色の目をして生まれた僕らは、絶対に「正しくない」。
 だから、言い返さず、疑問を持たず、言われた通りのことをしなくてはならない。
 そして、僕の髪をつかんでいるのは、金色の、美しい頭髪を持って生まれた人だ。
 「金髪の人々」のやることやなすことは、全て、正しい。
 だから、僕は完全に間違っているのだ。
「も、申し訳ありませんっ。ただ今、準備を……」
「いらねえよ。『緑目団』、直々のお呼びだ。灰色野郎が格好を付けるので、一秒だって無駄にはできねえ。さあっ、さっさと来い!」
 金髪の人は、僕の腹に拳を見舞って、引き起こした。
「灰色」の僕が、金髪の人にこんな面倒をかけるなんて、どう考えても、正しくない。
(勤労奉仕十時間分で、許してくれるかな……)
 思いかけて、僕は慌てて考えを打ち消した。
 こんな僕が、僕たちが勤労奉仕に参加できるのは、金髪の人たちの、慈悲だ。懲罰と引き換えにできるようなものではない。
 起きて間がないからか、考えにまだ、不純なものが残っている。
 打ち消さないと。
 髪を引っ張られながら、僕は何度も口の中で唱える。少しでも疑われたなら、その時点で、「終わって」しまう。
「緑目」の方々は、ほんの少しの疑念も許さず、そして、見逃さないのだ。

 

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