幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

幻影草双紙42〜10年後〜

   

 10年後。
 まだ小説を書いているのかな。

 

 
 佐々木善蔵が生まれたのは鹿児島県の西部地方である。
 旧薩摩藩という土地柄もあり、佐々木家の親戚筋には、明治維新に活躍した有名人の子孫が、数多くいた。
 その子孫たちも、日本の中枢部で、活躍している。
 それに引き替え、佐々木善蔵の父親は、地方の公務員でしかなかった。
 親戚の間で、肩身が狭い――。
 彼は、息子である佐々木善蔵に、望みを託した。
「お前は、偉くなるんだ。総理大臣になり、金持ちになるんだぞ」
 それで、佐々木善蔵には、小さい頃から家庭教師が付き、ハードな勉強をさせられたのであった。
 佐々木善蔵は、父親の希望に、よく答えた。
 小学校から高校まで、成績はトップであった。
 そして、東大へと進んだ。
 さすがに、全国から秀才が集まる東大である。
 入学初年度は、成績が中位でしかなかった。
 佐々木善蔵は、初めてトップの座から滑り落ちたことで、驚いた。
 しかし、驚き、落ち込んだのは、ほんの少しの間だけである。
 佐々木善蔵は、野望を燃え上がらせた。
「僕は、総理大臣になり、金持ちになるんだ」
 勉強の仕方に関しては、佐々木善蔵は、小学校以来、筋金が入っている。
 彼は、必死に勉強をして、トップに返り咲いた。
 そして、国家公務員試験を簡単にクリアして、大蔵省へ入った。
 大蔵省。
 現在の財務省であり、日本の中枢をなす省なのである。
 ここでキャリアを積み、しかるべきときに政治家に転身する――。
 いくつかの大臣を歴任する――。
 そして、ゴールは総理大臣――。
 と、まあ、これが佐々木善蔵の、人生の設計図であった。
 彼の毛並みのよさと、頭のよさ、そして職場のよさからして、この設計図に瑕疵はなかったのである。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品