幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

幻影草双紙43〜10年〜

   

 10年とは?
 長いようで短い、短いようで長い時間です。

 

 大久保幸雄は、驚愕した。
 10年後に死ぬことが分かったのである。
 何も知らなければ、これからの10年間を、幸せに暮せたであろう。
 そして10年後に、不治の病が発見されて、死亡する――。
 まあ、仕方のないことではある。
 病気、あるいは事故かもしれないが、人間、いつかは死ぬのだ。
 しかしながら、10年後に確実に死ぬ、と分かったのでは、死刑判決を受けたのと同じではないか。
 なぜ、確実に死ぬ、と分かったのか?
 大久保幸雄の体内から、定進行性遺伝子変態悪性腫瘍が見つかったのだ。

 定進行性遺伝子変態悪性腫瘍。
 簡単にいえば癌。
 確実に、時間通りに進行する癌なのである。
 確実に、時間通りに進行するとは、生真面目な癌ではある。
 つい最近、ハ―バ―ド大学の教授が発見した、珍しい癌なのだ。
 非常に珍しい癌に、偶然罹患するとは、もちろん、不運なことであった。
 しかも皮肉なことに、彼でなければ、この癌を見過ごしていたかもしれないのだ。
 大久保幸雄は、大正緑林大学医学部付属病院の、若い医者であった。
 新発見の、定進行性遺伝子変態悪性腫瘍は、彼が属する医局でも、大きな話題となっていた。
 大久保幸雄は、面白半分に、自分自身の遺伝子に定進行性変態があるかどうかを、調べてみた。
 そして、どんぴしゃり、定進行性遺伝子変態悪性腫瘍が発見されたのであった。
 進行する時間を計算すれば、ちょうど、10年後に死ぬことになるのだ。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品

報酬は山分けで

男子会①

ダストドール第12話VSサイコ

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第三話 ヤバいブツを掘り返せ!(1)

鐘が鳴る時 ■予感-七海朔也 弐