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幻影草双紙45〜どこかで聞いた話3〜

   

確か、ドイツで安宿に泊まった時、詩文の妖精から聞いた話です。
 記憶が、もうひとつはっきりしないのですが……。

 

*** 《第1話》

 北の地に、大きな国がありました。
 寒い冬に、オーロラが見えることもあるくらいの、北の地なのです。
 国土のほとんどは、針葉樹の森林に囲まれていました。
 森林の中でも、とりわけ広大な森林の一画を、国の人たちは、〈守護の森〉と呼んでいました。
 守護の森は、国境沿いにあり、他国からの侵略を防いでいたからです。
 それでも、もちろん、守護の森で安心していたわけではありません。
 国境には砦を作り、国の主要部分には城を設けて、万全の備えをしていました。

 男は、砦の隊長でした。
 男は、並はずれた膂力と、勇猛果敢な根性を持つ、勇者でした。
 男が5回、他国の侵略を防いだとき、王様から、呼び出しがありました。
 5回も侵略を防いだことで、表彰されたのです。

 さて、表彰式が終わり、王宮からの帰り道のことです。
 守護の森の中を通っていると、彼方に、明かりが見えました。
 生臭い臭いがします。
「こんな森の中で、一体、何だ?」
 男は、明かりの方へ、近づきました。
 そこには、老婆がいて、巨大な壺で、何かを煮ていました。
 老婆は、ブツブツと、何かを囁いています。
 男は、驚きました。
「これは、どういうことだ……」
 勇猛果敢な男です。
 驚きましたが、恐くはありません。
「妖怪だな」
 男は、剣を抜き、老婆に近寄りました。
「おい、お前は何者だ。妖怪変化に相違あるまい」
 老婆は、卑屈な態度でお辞儀をして、言いました。
「これはこれは、大将様。私はか弱い老婆。妖怪変化ではございません」
「大将? 儂は、城の大将ではない。砦の隊長じゃ」
「いえいえ。すぐに、お城の大将に、なられます」
「まさか……」
「老婆の予言は、よく当たりますぞえ」
 老婆は、男を凝視しました。
 男が老婆の眼を見返すと、老婆の眼が、妖しく光りました。
 男は、なぜか、失神してしまいました。

 気が付くと、砦の寝所に寝ています。
 どうやって帰ってきたのか、全然、覚えていません。
 ただ、老婆に会ったことと、城の大将になる、と言われた予言だけは、しっかりと覚えています。
「儂は、大将になれるのか?」
 この予言は、現実になりました。
 ある城の大将が、謀反を起こしたのです。
 王様は激怒し、この大将を成敗しました。
 男は、この成敗の軍に加わり、大将を殺したのです。
 王様は、喜び、男を、城の大将にしました。

 

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