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ラブストーリー

白いキャンバス ●現代編 1

   

白いキャンバスに描かれていく家族の記念写生が十枚目を数えたとある朝、娘と母親の攻防を見守る父。
ひとりの女性と恋をして家庭を築き、今は家族愛に満ちた日々と言っても過言ではないけれど、夢半ばである現状に揺れ動くこともしばしば。
父として夫として男として、自分はどうあればいいのか……家庭を持った十年前を振り返る。

 

 妻、初音の横にもうひとり並んで描かれる記念写生が十枚目を迎えた春の朝、少しませはじめた娘と母親の顔をすることが多くなった彼女とのやりとりが日課となっていた。
 僕は少し距離を置いて、ふたりのやりとりを「またか」と微笑む感じでコーヒーを飲むのが日課。
 女の子の成長は早く、十歳にもなれば男親顔負けの発言をしてくる――といっても、妻の受け売りが多いんだけど、それでも着実に母親の真似から娘個人の発言へと変わっていく。
 成長しているんだな……と嬉しくなる反面、こうして少しずつ巣立っていく階段をのぼるのだと、嫁に出す寂しさのようなものを感じずにはいられない。
 男親とは不器用というか勝手というか……
 なんとか言いくるめ勝ちをとった妻が、呆れ顔で僕を見ている視線に気付き、咄嗟に目を逸らしたんだけど……
「もう、亮介ったら、また見て見ぬふりして。ねえ、あなたから言って、小学生の間はランドセルを使うのが決まりなのよって」
 ここ数日の攻防というのが、このランドセル騒動。
 何年も同じランドセルを使っていると、次第に傷みが目立ち始め、クラスの中ではランドセルを使わない生徒もいるのだとか。
 娘は自分ももう少しお洒落な学生鞄を使いたいと、妻に強請っている。
 学校側からは、ランドセル必須という決まりは出ていないけど、多くの生徒は卒業するまでランドセルを使っている方が多いと言う話から、妻は出来るだけそうして欲しいと娘に言い聞かせていた。
 正直、鞄を新調することは問題ではない。
 妻としては物を大切に使えば六年間使い続けられるということを教えたいらしい。
 僕は妻の意見に賛成なんだけど、娘にもよく思われたいと言う下心もあり、距離を置いていた。
「それに鞄ひとつ買うのに、パパがどれだけ頑張っているか、あの子は理解していないのよ」

 

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