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幻影草双紙47〜どこかで聞いた話5〜

   

 詩文の妖精から聞いた話だと思うのですが……。
 本当かどうか、あいまいにしておきます。
 著作権を主張されると困りますので。

 

*** 《第1話》

 若者は、銀行を経営する家の息子として、生まれました。
 若者は、銀行家の息子として、ふさわしい素質を持っていました。
 つまり、非常に頭がよく、堅実な性格だったのです。
 成人になり、父親の銀行へ入りました。
 父親から、銀行業務の手ほどきを受けました。
 頭のよい若者は、すぐに、すべての仕事を覚えました。
 そして、副頭取となりました。
 そろそろ、結婚相手を探さなければなりません。
 銀行のような堅い仕事では、結婚をして家庭を持っていることが、より大きな信用につながるのです。
 父親は、「おまえが結婚すれば頭取にして、儂は引退する」と言っています。
 若者は、どこかに、見目麗しく情けある娘がいないか、と探しました。
 ついでに、資産があるなら、それに越したことはありません。

 信用調査を担当する重役が、興味ある情報を持ってきました。
「副頭取、海の向こうの国に、大金持ちの娘がいる、との情報を得ました」
「ほほう。どんな娘だ?」
「これをご覧ください」
 重役は、娘の肖像画を見せました。
「凄い美人だな」
「ええ。でも、美人だけに、求婚者も多いのです」
「そうだろうな。競争倍率は高いか」
「それだけではないのです」
「何?」
「娘と結婚するには、3つの箱から、1つを選ばなければならないのです」
「3つの箱? 何、それ?」
 重役は、次のような説明をしました。
 求婚者は、3つの箱から、最適な箱を選ばなければなりません。
 3つの箱とは、金の箱、銀の箱、それに鉛の箱です。
 金の箱には、〈我を選ぶ者、数多の者が望みしものを得ん〉と書いてあります。
 銀の箱には、〈我を選ぶ者、身分に相応せしものを得ん〉と書いてあります。
 鉛の箱には、〈我を選ぶ者、持てるすべてを投ぜざるべからず〉と書いてあります。
 この説明を読み、箱を選ぶのです。
 箱の中を見れば、〈当たり〉、もしくは〈外れ〉が分かるのでしょう。
 若者は、首を傾げました。
「なぜ、そんなややこしいことをするのだろう」
「そこまでは分かりませんでした。おそらく、父親の遺言なのでしょう」
「そうか……」
 若者は、感心しました。
 結婚相手を、自分で選べない――。
 自分の心を抑えて、父親の遺言に従う――。
 なんと、心の優しい娘なのでしょうか。

 

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