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ラブストーリー

白いキャンバス ●現代編 2

   

学生時代からの付き合いがある高木には言えるのに、妻である初音には言い難い。
そこを指摘され、ひとまず初音と話さなくてはならなくなった亮介は、教室で暫し考えを纏め、自宅に戻ると少し早目の昼食の準備をしている妻の姿が…
妻に話を――と声をかけたが、逆に妻から話があると言われ…

 

◆◇◆◇◆

「悪いね、高木。そっちもいろいろ手広くやってて忙しいのに、時間取ってもらって」
 妻 初音に急かされながら家を出た僕は、そのまま同じ敷地内に建てた平屋の別棟へと走って向かうと、既に教室用の出入り口から中に入った高木彩子が来ていた。
 今日の午前中、シニア向けのお教室、午後からは主婦、夕方は子供、夜は社会人向けのお教室と一日中生徒が出入りをする。
 その殆どを高木が担当している為、早めの出勤で来てもらうのは、かなり貴重な時間を僕の為に割いてもらうということになる。
 待たせてしまうなんて――と自分の失態を悔いながら、手際よくインスタントコーヒーを入れる彼女に深く頭を下げた。
「構わないよ、亮介。今の私があるのは、あなた方夫婦のおかげでもあるのだし。で? 話って?」
「うん。この教室のことなんだけどさ」
 画廊の経営を高木に任せた後、自宅の敷地の一角に平屋の別宅を建てた。
 最初は僕のアトリエとして使う予定だったんだけど、画家としてよりクリエイターとしての仕事が増えた為、空き時間を利用して絵の教室でもやろうという話が出た。
 言いだしたのは初音だったかな……?
 空いた時間に絵を描けばいいのだろうけど、そこまでの気力もなく――
 最初は数人の生徒、しかも小学生相手だから、初音でも先生を務めることが出来た。
 育児の息抜きに丁度いいと言って楽しんでいたのは最初の数か月、次第に僕も初音も時間に追われるようになって、その助けを高木に求めたのが本格的に始動するきっかけとなったんだ。
 週に数回、夕方を担当してもらい、僕が日中を担当、孫会いたさに顔を見せる義母に娘を託し時折、初音も担当する。
 画廊の方も教室の方も軌道に乗り、人を雇うゆとりが少しずつ出て来たのだけど、教室の方は相変わらず身内と知人で回していた。
「先生の募集をしようと思う。どうかな?」
「どうかなって、雇い主はそっちなんだし、私に聞くことはないんじゃない? 初音ちゃんの絵本もなかなかの評判のようだし、だんだんこっちまで手がまわらなくなった?」
「うん、まあそれもあるけど。僕はさ、趣味で絵を描くのも、絵で上を目指すのもどちらも応援したいし、手伝えることは手伝いたい。自分の技量はわかってるからね」
「そう……やっとその気になったの」

 

-ラブストーリー

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