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幻影草双紙49〜リゾートホテルの夜〜

   

 甘くて切ないリゾートホテルの夜です。
 この体験を、決して忘れることはないでしょう。

 

 山中真一は、ぼんやりとテレビを見ながら、ビールを飲んでいた。
 湯上りの火照った体に、ビールが美味い。
 あとは、新藤まり子が、風呂から出るのを待つばかりである。
 山中真一は、時の流れを感じて、苦笑した。
 山中真一は、今年、大学を卒業して就職した、社会人一年生である。
 時の流れを感じる――、というほどの年ではないのだが、昨年と今年では、大きな違いがあるのだ。

 昨年、ゼミの仲間とこの海水浴場へ来たときには、民宿へ泊ったのであった。
 今年は、外資系リゾートホテルのダブルルームである。
 このホテルは人気が高く、夏の盛りに予約を取ることは、まず、不可能であった。
 それが、山中真一が就職した大手商社のコネで、泊れたのである。
 新入社員でも会社の恩恵がある――。
 山中真一は、社会の仕組み、大手商社の凄味に、感心していた。

 昨年、民宿のテレビで見ていたのは、サッカーばかりであった。
 それが、今見ているのは、経済番組である。
 社会人になった途端、Jリーグの順位よりも、株価の動向に関心が移ったのだ。

 昨年、ゼミ仲間の新藤まり子は、遠い存在であった。
 新藤まり子には、三田村貴史というボーイフレンドがいて、公認であった。
 山中真一は、遠くから、ミス平錦大の新藤まり子の美貌を眺めるだけであった。
 それが、今、新藤まり子が風呂から出るのを待っているのである。

 カーテンを開けてある窓の外には、海が広がっている。
 月が、海の表面に映っている。
 ときどき光るのは、浜辺で打ち上げている花火であった。
 ムードは満点だ――、と山中真一は思った。
 ルームサービスで、ブランデーとカナッペを頼んであった。
 大人の甘い夜は、ブランデーでなければならない――、と山中真一は思っているのである。
「お待たせ――」
 新藤まり子が、風呂から出てきた。
 山中真一は、新藤まり子を見て、唖然とした。
 新藤まり子は、ピンク色の、透き通るネグリジェを着ているのだ。

 

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