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歴史・時代

ハヤブサ王 第2章 〜大和騒乱(2)

   

 オオヤマモリノミコ、動く!
 有力豪族を巻き込んでの皇位継承争いが、ついに戦に発展。
 ワキノミコも重い腰をあげ、大和一円は戦乱の真っ只中に。
 ワケノミコやイワノヒメたちも、その戦乱に巻き込まれていく。

 

 オオヤマモリノミコ、動く!
 この一報がもたらされたのは、秋の気配が差し迫ったころのことだった。
 この日、ワケノミコは屋敷の庭先でメトリノヒメミコと一緒に遊んでいたのだが、彼女が立ち止まって小道の向こうを指差した。
「ワケちゃん、あれ!」
 小さな指先を目で追うと、小道から異様な一団が現れた。
 どこかの兵士らしい。二頭の馬を先頭に、武装した兵士が数名続いている。二頭の馬は茶馬と黒馬である。茶馬に乗った男は短甲を着込み、腰には太刀をぶら下げて、蓄えた口ひげをいじりながら忙しなく周囲を見回している。一方、黒馬に乗った男は貴人服に身を包み、きりりとした目で前を見据えていた。
 兵士の一団は、明らかにこちらに近付いる。
「あ、あたし、イワノヒメ様にお知らせしてくる」
 怖くなったのか、メトリはすぐさま踵を返し、屋敷の中に飛び込んでいった。
 ひとり残されたワケノミコも怖かった。兵士の姿を見ると、どうしても母の屋敷を取り囲んでいた宮の兵士のことを思い出してしまう。
 このお屋敷も取り囲まれるのだろうかと、膝をかくかく震わせながら佇んでいた。
 一団は、ワケノミコの目の前で歩を止め、茶馬から男が降りるとワケノミコに歩み寄った。
「ヒツギノミコ殿の弟君か?」
 ワケノミコはこくりと頷く。
 すると男は片膝を付き、頭を下げた。
「我は葛城の長ソツビコ。ヒツギノミコ様に火急の知らせがあり、オオサザキノミコ殿とともに参上仕りました、とヒツギノミコ様にお伝え願えませんでしょうか」
 ソツビコは頭を上げると、口ひげをきゅっと上げて微笑んだ。
 その笑顔でワケノミコの恐怖心も幾分かなくなった。
 ワケノミコは微笑を持ってソツビコを見た。そのままの微笑を馬上の男に向ける。
 騎乗の男は、にこりともすることなく鋭い眼差しを寄越した。その眼差しは冷気を含んでいる。男の瞳を見ていると、ワケは再び恐怖心が湧いてきた。
 怖くなって踵を返したのだが、背中に氷柱を入れられたようで寒気が走った。
 ワケは逃げるようにして屋敷に駆け込んだ。

 

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