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歴史・時代

ハヤブサ王 第2章 〜大和騒乱(3)

   

 宇治川を挟んで対峙したワキノミコ軍とオオヤマモリノミコ軍。兵力差は約二倍。
 兵の数にものを言わせて攻め込んでくるオオヤマモリノミコ軍。
 そこでワキノミコ軍は、ある作戦を実行するのだが…。
 すべての人々の思惑を呑み込んで、時代は大きく動き出していく。

 

 東の空が白ばみはじめた。
 宇治川の傍の丘陵地に、ワキノミコの軍が集結をはじめた。
 対岸は、オオヤマモリノミコの軍が集結をはじめている。短甲を身に着けた尾張氏の屈強の兵士がぞろぞろと集まっている。
「うむ、これは、これは、次から次へと蟻んこのように這い出てきますな」
 ヤマベノオオタテは太い腕を組んで顔を顰め、ワキノミコを見た。
 ワキノミコは眉間に皺を寄せ、対岸をじっと見詰めている。相当緊張しているようだ。さもあらん、ヒツギノミコ様にとって、これが初陣になるのだから。
「ヒツギノミコ様…、ヒツギノミコ様」
 二度目の呼びかけに、ワキノミコは我に返った。
「大丈夫でございます。ソツビコ殿が上手くやってくださいます。ワキノミコ様は、ここで高みの見物と洒落込んでください」
「う、うむ…」
 ワキノミコは、オオタテに向き直った。
「オオタテ、私は…」
「はあ…」
 次の言葉を待ったが、ワキノミコの口はなかなか開かなかった。
 沈黙の二人の間に、ソツビコが割って入った。
「オオタテ殿、そろそろ作戦に移りますので」
「はっ」
 オオタテは、もう一度ワキノミコを見た。彼は、すでに対岸のオオヤマモリノミコ軍に目を移していた。
 ワキノミコの様子が気になる。ヒツギノミコは一体何を言いたかったのか。オオタテは、後ろ髪を引かれるような想いで、戦場へと足を運んだ。

 

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