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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

堕天使の鎮魂歌 1

   

記憶を失くした雅孝を偶然拾った篤志。
それがきっかけで、雅孝は三上の指示で仕事をすることになる。
その仕事というのが――

 

 

【ゲームセット】

 今年初の雪が降り出した港に、新年を知らせる船の汽笛が鳴り響く。

◆◇◆◇◆

 一緒に最後の新しい年を迎えたいと、蝶姫(ちょうき)からの連絡に、俺は迷わずふたつ返事で応じた。
 ちょうど23時50分、自ら運転してきた車から降りて指定された港へと向かうその先に、蝶姫の姿を確認した。
「待ったか?」
 その問いに「いいえ」と笑って答えた蝶姫の手は、とても冷たかった。
「雅孝(まさたか)の手は暖かい……」
 温もりを求めるように握り返してくる。
 コートのポケットに手を入れていたせいだろうか、そのまま握った手を再びコートのポケットへと入れる。
 互いの身体がより近づき、もう片方の腕が自然と蝶姫の腰を抱き引き寄せる。
 どちらからともなく唇が重なり合い、俺は冷えていた蝶姫の唇を暖めるように、何度も何度もつばむようなキスを繰り返した。
 その時間は長いような短いような――気が付くと、新しい年へのカンウトを教える汽笛が鳴り出していた。
 ポケットの中で繋いでいる手、暖かい温もりがいつまでも続いて欲しいと願う。
 しかし――次第に自力で立つことが不可能になっていく蝶姫の身体の重さが、抱いている片腕にのしかかる。
 離れていく唇は青白く、閉じられていく蝶姫の瞳には、最後まで俺の顔が映っていた。

 なんで、雅孝、あなたが生きているの――?

 そう問いかけながら、蝶姫はその理由(わけ)を知ることなく、命の灯火を消した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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