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にゃんと素敵な東雲市役所猫支店 芦葉ハヤトの報告書 その①

   

 僕は東雲町市役所猫支店捜索課所属・芦葉ハヤト。
 ヤナセ氏事件から三日経ったある日、僕は篠原課長からヤナセ氏の孫娘・七海 チロを連れてこいという命令を受ける。
 いくつか方法はあるがさて、どうするか……
 捜索課の芦葉 ハヤトが主人公の『篠原みづきの奔走』の後日談。

 


 
 僕、芦葉ハヤトが東雲市役所5階の捜索課オフィスで、毛布に包まれて目を醒ますとあの狂乱の日……ストライキと徘徊老人の捜索の日から三日経っていた。
 壁掛け時計は朝7:09を示している。
「おはよう、芦葉くん。よく眠れた?」
 課長がいると思っていなかった僕は、心底びっくりした。
 僕たち捜索課は午前八時から午後五時までの市役所内で、唯一フレックス制を採用している珍しい課だ。
「すみません。寝過ぎました……」
 いいわよと言う課長は、てのひらでオレンジ色の球体を転がしていた。ドア真正面の一番大きなデスクに陣取った課長は、何かの采配を振るっているらしい。
 このオレンジの球体は課長のお姉さんが、魔法と呼んだものだ。
 正式名称を五感外部抽出理論及び技術という。
 名称になっていない長い名前だ。
 猫の鋭角な五感を外部に抽出。独自のプログラムで五感をばらし、再構築。球体やキューブ状に形成、対象へとアプローチする。人間世界の物で言えば、たくさんの解析コードの詰まったUSBだと思えばいい。
 記憶を見るには皮膚から情報を取得しつつ、海馬にアプローチする。とはいえ、僕は深層意識まで達するような高度な記憶閲覧を扱えないので、ヤナセ氏の情報は地道に探ろうとしていた。結局、失敗してしまったが。
「コーヒー飲む?」
「僕が淹れますよ」
「いいのよ。気晴らしに立たせて」
 課長が、球体を握りつぶし、よっこいしょと意外におばさんくさい(言ったら殺されるので絶対に言わないが)かけ声をかけて立ち上がる。壁際に吊されたマグカップを二つ取った。
「芦葉くんは牛乳派よね?」
「そうです」
 コーヒーメーカーからぬるめに設定された真っ黒な液体を注いで、ひとつは自分の席に、もう一つを牛乳とセットにして僕の席に置いてくれた。
 毛布をはぎ取って、枕元に置いてある眼鏡をかける。伸びをすると三日前のあれこれが僕の少ない脳を怒濤のように巡った。
 課長のお姉さんとヤナセ氏を通す道を作るので、能力をフルに使った僕は二人を見送った直後に失神するように眠った。
 そんな僕を課長は、背負ってここまで運んできてくれたのだ。課長は、タフで気性が荒いわりには面倒見が良く、その面倒見の良さで策略家ながら人望も厚い。

 

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