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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

堕天使の鎮魂歌 5

   

蝶姫と会うのは3度目、やっと雅孝は彼女を部屋に招き入れることに成功する。
恋人ならそうなっていくのは自然という流れをひと通り経験をしながらも、雅孝の心情は仕事を成功させることしかなかった。

 

 

【三度目は危険な香り】

 翌日、篤志から添付付きのメールが届いた。
 添付を開くと、遠目から見た蝶姫の姿が映っている写真だった。
 髪型か少し違うが、蝶姫だという確信があった。
 嫌いだと言っていた茶髪、サラリと風になびく、ストレートヘア。
 トラウマだと言っていた地毛の茶髪姿であえて外に出るだろうか。
 俺の中で、新たな疑問が浮かぶが、今はそれを確かめる手立てはない。
 ――と、なるとやはり、あの店に行くしかないということになる。
 そのまま篤志へ、今夜、蝶姫と会うつもりで店に行くことを、メールで伝えた。

 今夜で三度目になる、蝶姫と過ごす時間。
 きっと、今回がひとつめの鍵となりそうな予感がしていた。
 店内は相変わらず繁盛していて、人が多く雑音も凄い。
 人を掻き分け、奥のカウンターへと辿りつくと、蝶姫と俺がいつも座っていた場所だけがポッカリと空いていた。
 まるで、俺や蝶姫が来るのがわかっていたかのように。
 そして、俺は当然のようにその席へと腰を下ろした。
「いつもので?」
 カウンター越しにボーイが俺に声をかける。
「いつもの?」
「はい、蝶姫さんと先日飲んでいらした記憶があったもので……迷惑でしたか?」
「いや、それでいい。ところで――」
「なんでしょう?」
 手際よくカクテルを作り出すボーイは、動かす手は休めずに、目線だけを俺に向け聞く体制をとってくれた。
「蝶姫って馴染みなのか?」
「そうですね――よく来られるので、常連さんですよ。毎回楽しく飲まれていかれるので、我々ボーイ仲間でも顔と名前を覚えたくらいですから。ですから、お客さんのことも自然と」
「そういうものなのか?」
「いえ、蝶姫さんが特別なんですよ。あの方が、同じ方と続けて飲まれるのは、初めてのことですから。ですから、既に仲のよいお付き合いなのだと、思っていました」
「思っていた?」
「はい。冗談っぽく、先日の素敵な彼氏はご一緒ではないのですか――と、お尋ねしましたら、違うとスッパリ仰られて……まぁ、ここに初めていらした時は、マスターの紹介だったみたいですよ」
 そう言えば、初めて蝶姫をみた時、マスターと声をかけていた。
 マスターも調べてもらう必要があるかもしれない。
 俺の手前にいつものスカイシトラスマティーニが置かれると、横にひとりの女性が腰掛けた。
「嬉しい。まだそのスカイシトラスマティーニを飲んでくれるなんて……」
「蝶姫?」
「だって、そうでしょう? あの朝、フラレたのかと思ったから――」
 そんなつもりはないし、蝶姫だってそう思っていないことは、顔を見ればわかる。
 かけ引きとかではない、この女――俺と同業者だ。
 確信は、確実となった。
 引き摺りこんでやる――闘志が湧き、落とし屋としてのモードにスイッチが入った。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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