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SF・ファンタジー・ホラー

にゃんと素敵な東雲市役所猫支店 迷惑千万、立入禁止!編

   

 私・篠原みづきがホームページに『にゃんと素敵』シリーズを掲載するとさっそく反応が。驚き勇んで向かった場所で待っていたのは、いかにもお軽い高校三年生の俵 理人だった。なんなの! この子! 理人の無計画さに頭を抱える私に、彼は向こうの世界でやっているお祭りに一緒に行こうというのだけれど……。
『にゃんと素敵な東雲市役所猫支店』シリーズ3作目

 

 
 柳瀬さん事件から私・篠原みづきがようやく立ち直ったのは、あの日から一ヶ月後のこと。すでに真夏を迎え、高校時代の友人・香織がホームページを作ってくれた日だった。
 香織が家に来たとき、私はメンタルとフィジカルにダメージを食らって、ほとんど死に体だった。なにせ林さん率いる丸紅出版で連載を開始していたからだ。
 酷暑日の日曜。クーラーをがんがんに効かせた部屋で、香織はフクちゃんを抱いてパソコンをスムーズにいじくっていた。
「ほらみづき。ここをこうすれば!」
 じゃーん! 
 効果音つきでクリックすると香織の膝の上のフクちゃんが、おめでとうというように鳴いた。
 ネット上にあげられた『にゃんと素敵』シリーズの原稿は、黒猫が優雅に踊るサイトで息を吹き返した。
 香織……ありがと。
 何も言えない私は、感極まってぼたぼた涙を流した。
「やっだ。なに泣いてんの!? 今どきホームページひとつで泣く人いないよ!?」
「だってぇ」
 齢三十間近の売れない作家の涙は、かなりしょっぱい。しょっぱいんだけど、もう柳瀬さんの件といい、連載の過酷さといい、泣くしかなかったのだ。
「……よっぽど辛かったんだねえ。その人のこと」
「だってさぁ、柳瀬さん家から来たの、超素っ気ないお礼状と一万くらいする高級和牛だけだよ。そんなのいらないから、もう一度会わせて欲しかった。……肉美味かったけど」
 ちーんと鼻をかむ私に、うんうんと頷く香織。香織と私の家は近く、幼なじみでもあるので、こうしてお互い時間の都合がつくときは顔を合わせてお茶している。お互い実家住まいということで話も合うし。
「あっ、もうカウンター回った。やっぱり、SNS登録したのでかいんだなあ。小説アップすると、同時に流れるようにしてるから集客いいんだよねえ」
「なにカウンターって。エスエヌエスってなに?」
 フクちゃんが、そんなことも知らないの? というような目で見ている。……悪かったなあ。香織に隠れてべえっと舌を出すと、フクちゃんはふいっとそっぽを向いてしまった。
 人版フクちゃんに会ってから、私はどうにもフクちゃんの表情を読むのが上手くなった。良いことなのか悪いことなのか。
「これだよこれ。トイッター」
 幸福の青い鳥……ではなく、赤い鳥が飛ぶネット画面を表示させると真山 菜々美とでかでかと書いてあった。《職業:作家 ご用命の際は、丸紅出版社までご連絡を》とまで入ってる。
「おお、リプ来た、リプ来た!」
「は? なに? なに?」
「リプライ。返事のこと。さっきのリンクから飛んで読んでくれたんだ」
 答える香織は、@と書かれた部分をクリックした。私も前のめりになってパソコンを覗き込む。阿呆らしとばかりにフクちゃんは、香織の膝をおりてどこかへ消えていった。

 

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