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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

8月のエンドロール 2

   

厄介事を運ぶコタニ マリに翻弄されるシオリ。
過剰なまでにシオリを心配するメグミは、カスガイ タイゾウを使ってとある事件に関わり出す。
疾走する『憂鬱な金曜日No.2』配信

 

憂鬱な金曜日 No.2

「ねー。マリに会えて嬉しい? 久々だよねえ。何年ぶり? 無視しまくってたの、どして? マリ、今、行くところないの。シオリちゃん家行ってもいいよね?」
 ……マリちゃん。いつも脳天気なシオリの唇がわななき、あたしは目を疑った。
 コタニ マリと名乗った女子高生は、シオリが嫌う煙草の臭いをまといながら、背中から覆い被さり、ねちっこく責め立てた。シオリは俯いてしまって怯えている。
 ほんとこいつ、何者だ。てか、どこの高校だ。この辺の制服じゃないし。
「おい、やめろよ」
 大声を出すと、成り行きを見守っていた周囲の客がざわりと動いた。それでもコタニ マリは、シオリに覆いかぶさったまま視線だけあたしに寄越した。
「他人が姉妹の再会に口ださないでくれます?」
「出すに決まってるだろ。シオリに妹はいねえんだよ。離れろブス」
 顎を振ってあっちへ行けと促す。コタニ マリはドスの効いた笑顔になった。
「あんた、なに?」
「お前こそなんだよ。JKリフレみたいな制服着て、男に買ってもらってんだろ? 相場は一回一万? そのお顔とどうみてもBカップしかないおっぱいからしたらお高いよな。買う方も買う方だけど」
「てめえ」
 マリが震えた。
 もうちょっと煽るか。
 口を開きかけたらシオリが目顔でやめてくれと告げた。渋々押し黙る。
「ちょっとマリちゃーん。いつまで待たせんの? 早くビール注いでよ」
 喫煙席からいやにへろへろしてる大学生風の男が顔を出し、マリを呼びつけた。
 マリが商売女の顔に早変わりする。
「ごめんなさぁい。今、行きます」
 媚びを売るマリは、シオリに「覚えてろよ」と囁くと喫煙席のドアをくぐった。ドアが閉まる瞬間、マリが男に抱きついているのが見えた。
 ……マジでJKリフレやってんのか。クソ女が。
「うえ……っ」
 解放されたシオリが今にも吐きそうな、変な声を出してテーブルに突っ伏す。
「シオリ……シオリしっかり」
 肩を揺する。ブラウスの下から感じられるぬくもりがほどんどなかった。
「出よう。違うとこ行ってあったかいもん食おう」
 注文をキャンセルしてファミレスを出ると、石畳にうずくまったシオリが吐いた。膝をついて腹を押さえ、げえげえと胃の中を空っぽのするように嘔吐する。ファミレスに入ろうとする客がぎょっとしたように避けていき、あたしはシオリを庇いながら謝った。
 えづくシオリを駐輪場まで引っ張っていき、原付に座らせる。力の抜けた彼女は立つ力も残っていなかった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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