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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

堕天使の鎮魂歌 9

   

事件の幕引きは、雅孝自身の手で行われた。
この事件解決と共に、失われた雅孝の記憶が戻る――

 

【堕天使のレクイエム】

 クリスマス前、俺は俺らしくもなく、蝶姫にメールを入れた。
 あれ以来会っていないし、連絡も取っていない。
 ただ、最後にもう一度、蝶姫に会っておきたくなった。
 クリスマスというイベントをきっかけに、連絡を入れたものの結局、当日になっても蝶姫からの返事はなかった。
 このまま会わずに終わるのか――三上さんに、引かないと宣言してから数週間、一向に蝶姫と会うきっかけを作れないでいた。
『無理するな。こっちでやる。その方がラクだろう』
 何度目かの篤志からの打診の言葉が、電話を通して伝えてくる。
「もう少し、待ってくれ」
 そう答えたのは、これで何度目だろうか。
 次に返ってくるのは、篤志の溜息。
 これも何回聞いたことか。
『惚れたのか?』
「まさか。ただ、中途半端なままで、他のヤツに手を入れられたくないだけだ」
 これは結構本音なのだが、そういうのも一種の本気の恋ではないのかと、篤志は言う。
 待てるのは、年内いっぱいだ――そう期限を通告され、電話が切れる。
 残り、一週間もない、諦めが過ぎる。
 三上さんや篤志が、このまま蝶姫を自分たちのテリトリーから出すはずが無い。
 俺が引くと言えば、即座に身元不明の死体の出来上がりだ。
 もう一度だけ、俺は最後の賭けとして、蝶姫にメールを打ち始めた。
 閉じた携帯を開き、蝶姫のメアドをアドレス帳から入れたその時、携帯の着信音が鳴り出した。
 ある人物からの着信にしか鳴らないメロディー、蝶姫からの電話だった。

 

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