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歴史・時代

薔薇と毒薬 2

   

架空ヒストリカルロマン

王位継承の儀式を控え、第一王子ノイッシュの身辺は落ち着かないものとなりつつあった。
そんなある日、ノイッシュが舞踏会で聞いたのは、異国から来たオルゴールの歌だった。

「すばらしい歌だった。離宮に来てもらえないだろうか。病で伏せっている母に、貴女の歌を聴かせたい」
そうノイッシュが言うと、少女は、一瞬だけびっくりしたような顔を見せたあと、花のような笑顔で答えた。
「喜んで。身に余る光栄に存じます」

 

 窓から差し込む午後の光が、寝室を金色に満たしていた。
 ファレーナ王国の第一王子ノイッシュは、母フリーデの眠るベッドのカーテンをそっと開けた。その顔を見ようと身を屈めると、母譲りの明るい金色の髪がはらりと落ちて、視界にかかる。
 今年ノイッシュは十八歳になったが、それでも未だに他人には、母との印象の類似をまず言われる。髪の色だけではなく、春の若草を思い起こさせる碧の瞳も、生き写しのように似ていると。
 ノイッシュの気配を感じたのか、眠っていたフリーデがうっすらと目を開けた。
 母に請われるまま長めに伸ばした髪を片手で除けて、ノイッシュは訊ねた。
「起こしてしまいましたか」
 すると、フリーデが微笑んだ。
「いいえ、先刻から半分は起きていたの。今日は暖かくて、とても気持ちがいいわ」
 そう言う母のベッドのそばの椅子に、ノイッシュは座った。
「母上、今日は異国のオルゴールが、城にやってきました」
 長いこと病床にある母に、日々の出来事を語って聞かせるのが、ノイッシュの日課だった。

 

-歴史・時代


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