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ノンジャンル

秋空と恋心

   

高校の同級生4人も今年で三十路に突入。
それぞれ違った人生を歩む4人が、1年に1回顔を合わす秋の季節。
今年の企画は秋の味覚狩りだったのだが…

 

 
晴れたな……と空を仰ぐ。
1週間近く降り続いた雨が嘘のように晴れ渡ったのは、もう奇跡としかいいようがない。
「雨宮がいないからじゃないか?」
毎年恒例の行事に珍しく欠席と返信してきた雨宮は、名前に『雨』という漢字が入るという理由だけで、昔から行事当日に雨が降ると彼のせいにされていた。
最初は悪い気がしたけれど、本人の明るい性格がそれを笑いへと変えていく。
だがしかし、彼が参加しても晴れることが多かったことから……
「いや、それは違うだろ。あいつはどちらかといえば晴れ男じゃなかったか? 今日だって、俺たちのことを思って晴れにしてくれたんだ。土産は忘れないようにしておこうぜ」
「だな。けどあいつも災難だな。骨折だっけ?」
雨宮がいないからと言ったのは葛木で、クラスにひとりくらいは必ずいるお調子者タイプの男、違うと否定したのは井村屋で、まとめ役担当みたいな位置に昔からいる。
で、最後に災難だなと言ったのが俺、狛田、通称狛犬。
犬のように誰かの後ろをついてくるだけだからという理由と、苗字に『狛』という漢字が入るからという理由でつけられてからかれこれ15年は経った。
あの頃、青春真っ盛りの15歳だった俺たちもとうとう三十路突入、彼らとの付き合いも15年になる。
俺たち4人はそれぞれ別の中学から同じ高校に入り、たまたま偶然同じクラスになって、なんとなく入った『ハイキング同好会』が同じで、気が付けばいつもつるんでいた。
雨宮は実家の八百屋を継ぐと言って進学を諦め、葛木は専門学校に、井村屋と俺は大学に進学して就職氷河期をなんとか乗り越え就職浪人することなく職にありつけた。
その間、俺と井村屋は同じ大学で付き合いはそこそこ続いていたけど、ほかのふたりとは疎遠状態、それが再びこうしてつるむようになったのは、5年前の同窓会だった。
稼業を継いだ雨宮はすでに結婚していて子持ち、葛木は就職浪人が続きフリーターとそれぞれ違った道を歩んでいたのだけど、もともと気心知れていて居心地良かった俺たちはすぐに意気投合、健康の為にも1年に1回、ハイキング同好会の行事を復活させようということになった。
毎年交代でハイキングコースを決めて予定をたてる。
今年は雨宮が担当で、本人も前日の夜まで行く気満々だったのだが……
「ばか、狛犬。捻挫だ捻挫。骨折だったら奥さんでなくても止めるだろ」
井村屋に呆れ口調で返される。
「しっかし、雨宮も歳がいなく張り切るから……」
「そうは言うが、葛木だってわが子の運動会に出たら歳甲斐なく張り切るだろう?」
「そんなものか? 俺は結婚もまだだからわからねぇよ。井村屋はそうなのか?」

 

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