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歴史・時代

薔薇と毒薬 3

   

架空ヒストリカルロマン

王子ノイッシュの身柄をおさえるために計画を練るマリエットとグレイ。

 マリエットはシーツをたぐり寄せて、腕の中に抱きしめた。
「……成功させなきゃ」
 滞りなく任務を遂行し、ギルドに一人前のリアンドールだと認めさせ、未来に自分の生命を繋ぐために。
 グレイに、自分が役に立つのだと思ってもらうために。
 自分の価値を認めてもらい、まだ、そばにいてもいいと、言ってもらうために。

 

「まさか、ターゲットの方から接触してくるなんてね」
 迎賓館に戻ってきたマリエットは、ドレスを脱ぎ捨てて言った。ペチコート姿で室内を歩き回るマリエットに、グレイが苦々しげに命令をする。
「男の前で服を脱ぐな」
「全裸になってるわけじゃないんだからいいでしょ。大体あたしを女だと思って見たことなんてないくせに。それともどう、あたしも十六になって、少しは色気とか出てきたかしら?」
 グレイにウィンクして見せながら、ドレスの胸を大きく見せるために入れていた布を抜き取り、籠に放る。
「下着姿でうろうろ歩き回る子どもを、女だなどと認識出来るものか。自室に行って着替えろ」
 そう言われたマリエットが、不意に不安をその瞳に覗かせ、ちいさな声で言った。
「だって部屋のクローゼット、怖いんだもの。奥が深くて、暗くて……」
 グレイが軽くためいきをつく。
「とにかく早く着替えろ。暗いクローゼットに行くのが嫌なら、五分間後ろを向いていてやる。十六になれば一人前の大人として扱われる。いくら胸がなくてもおまえは女で、私は男だ」
 気にしていることを言われ、マリエットは口を尖らせた。
「一言多いのよ!」
 マリエットは、ペチコートとコルセットを脱いで、ざらりとした肌触りの、飾り気がない白い夜着に袖を通した。
 オルゴールとして舞台に上がるときに着るドレスや、人前に出るときの衣装は、宮廷に入り込むという任務に必要なものとして、相応に上等なものをギルドから与えられていたが、そうではないものは自前でそろえているため、質の落差が激しい。
「ん、もう、案外ケチよねえ……」
 その安物の夜着は、肌触りがいいとはお世辞にも言えないもので、どうにも首回りがちくちくする。昼間着ているものと同じくらいのグレードの布地だったら、どれほど寝心地がいいかと考えたりもする。けれど自分が贅沢を言える立場にないことは、マリエットも承知していた。

 

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