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恋愛 / ラブ・ストーリー

Love cannot be compelled 4

   2014年9月24日  

 その目に、蘭は耐え切れず視線を外した。だが、信長の言葉を考えて、蘭は項垂れた。それしか方法がないと思った。ここに住んでいたとしても、またきっと悟は来るだろう。少しずつ思い出されてくる悟の言葉は、信長にはついていかないと決め付けた言葉だった。
 どこでどう知ったのか、信長の女性関係を知っているような言葉だった。それにも引っ掛かりを覚えながら、蘭は視線を泳がせた。
「決めろ。お前はどうしたいのか」
 冷たい声色に、蘭はハッとして信長を見た。すると、視線を合わせた信長は、しばらく睨みつけるような視線を向けていたが、フッと目元を緩めて微笑んだ。
「俺は、お前を護る……。だから、俺を信じろ……」
 そう言われた瞬間に顔が歪んで、蘭は全てを預ける覚悟で信長に抱きついた。これに何か罠があったとしてもいい、それくらい今の現状を変える為に動いた。
「大丈夫だ、俺がお前を護る。昔に果たせなかった俺の決意を、今の俺がお前に果たす……」
「のぶ……」
 微笑んだ信長に見詰められて、蘭はゆっくりと目を閉じた。その瞬間に触れ合った唇。直ぐに深くなっていく口付けに、蘭は応じた。
 嫌じゃなかった。それどころか、触れ合った瞬間に求めだしてしまった心と体。幼き頃からの想いが、大人の欲望となって信長に伝えだす。もっと、もっと自分を求めて欲しい。
(信長……。もっとアタシを……)
「蘭…、綺麗になった……」
 唇を触れ合わせながら、信長が囁く。その言葉に新しい涙が溢れて、止められず泣きじゃくった。
 ずっと欲しかった言葉。幼き頃に聞けたなら、もっと何かが違ったのだろうかと、蘭はもう一度重なった唇に甘い吐息を漏らしながら、応えていた。
「……まだ熱いな。だが、悠長な事は言っていられない、それは分かるな?」
 そっと離れた唇から、現実を突きつけられる。一瞬目を見張った蘭だが、顔を強張らせながらも頷いた。
「体が辛いだろうが、一先ずの着替えと貴重品をバッグに詰めろ」
 そう言って蘭から離れた信長は、玄関に向かった。抱き締められていた腕が離れて、酷く不安な気持ちになった蘭は、慌ててベッドから下りてボストンバッグをクローゼットから取り出した。そして着替えを詰めて、引き出しから通帳などの貴重品も取り出して仕舞った。
 荷物を持って玄関に向かうと、信長が手を差し出した。
「荷物を寄越せ、先に車に積んでくる。俺が行っている間に、暖かい格好に着替えておけ」
「のぶ……」
 蘭の手からバッグを取り、出て行こうとした信長に思わず声を掛けてしまう。視界から消えてしまう事に、物凄い不安が押し寄せる。それが顔に出ていたのか、信長が困ったように笑い、蘭に近づいた。
「大丈夫だ。直ぐに迎えに来る。早く着替えておけ」
 片腕で蘭を抱き寄せて軽く口付けてから、信長は玄関を出て行った。
 ほんの一瞬の口付けに、少しの勇気をもらえた気がした。キュッと唇を結んだ蘭は、直ぐに着替えて信長が来るのを待った。するとドアが開いて、思わずビクついたが、信長の顔を見た瞬間ホッと息を吐き、そのまま倒れこんだ。
「蘭っ……」
 倒れこんだが、そのまま抱き込まれている自分に安心して、蘭は急に襲ってきた眠気に従って目を閉じた。

 

≪つづく≫

 

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