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にゃんと素敵な東雲市役所猫支店 姉と妹、そして世界の真実 後編

   

市長宅に到着したフクは、今回起こる東雲異変の予測を語る。
絶望する人々を叱咤激励するフク。
一方、旅を続けるみづきは《果ての本屋》に行き着き、夢を食べる獏に会う。そこで起こった不思議なこととは?
行きて帰りし物語の『姉と妹、そして世界の真実』後編

 

 
 みづきが最初の乗り継ぎをした頃、フクは市長宅の大広間で三つ指をついて市長の北神に会釈をしていた。大広間は前回の東雲異変を経験して生き残ったフクの登場で、ようやっと静まった。広間に集まっているのは東雲市全土の各役所の重鎮である。その誰もが篠原フクを認めていた。
「余分な口上で貴重な時間をさきたくはありません。さっそく協議に移ります」
「相変わらずだのう」
 呵々大笑する市長は雷獣であった。仔犬のような体躯に二本の両腕と四本の脚。周囲に雷を放っている雷獣が、藍染めの着物を着てキセルを咥えている。
 北神市長は、二番世界を創ったとされる北神様の直系であり、東雲市を統べる神であり、神獣であった。市長・北神はフクの切れ味の鋭い眼差しを受け流すと、よいせと上座を譲った。
 それまで広間に混じっていた捜索課の面々も上座に移動すると、フクと共に指をついて会釈をした。
「では、今回の東雲異変の対策協議に移ります。まず、前回の東雲異変の説明を――芦葉くんお願い」
 フクが促すと、さっそく芦葉ハヤトが五感外部抽出理論及び技術――みづきが魔法と呼んだオレンジ色の球体を手のひらに展開した。球体は、風船ほどの大きさに膨らむと宙に浮かんだ。御手洗ナルが広間の電気を消す。浮かんだ球体のてっぺんからおしりまで割れ目が入った。
「これが当時の状況です」
 ヒビの入った球体は、フィルムのように真四角に開き、照明を落とした広間で二十年前の東雲異変の映像を展開した。データで残っている当時の状況と、フクとここにはいないご隠居の記憶を出力したものだ。よって非常に主観的になっている。
 映像は凄惨を極め、広間に集まった人々の恐怖心を煽った。
 地面が割れ、地震が起こり、海や河が逆流した。天候を無視した竜巻が各所で発生し、雨も降ってないのに土砂災害が発生した。極めつけは死火山だったはずの北神山が噴火し、市街地に向かって溶岩流が流れ、ほうぼうに灰を撒いた。フクかご隠居、そのどちらかが見上げた空は灰によって太陽の光が寸断され、暗い。
 災害に伴う火災や人家の倒壊がいたるところで起こった。人手は圧倒的に足りず、怪我人や死者が多く出た。
 そして、その名残は二年もの間続いた。復旧は遅々として進まず、農作物は全滅し、食糧不足に陥り、備蓄していたにもかかわらず、飢餓が起こった。
 二番世界で数十年にいっぺん起きる天変地異。それが東雲異変だった。
 ハヤトがフィルムをオレンジの球に戻すと、気の利くナルが広間の明かりをつけた。

 

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