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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録3 前篇

   

記録3《女子学生多喜子》

今回は短編です。
その前篇。

 

 直沢多喜子が初めてその男を見たのは、バスを降りて歩きはじめたときであった。
 向こうから男が歩いてきて、すれ違ったのである。
 中年の、がっしりした感じの男であった。
 背広にネクタイという、普通の服装である。
 だが、目つきが鋭い。
 堅気のサラリーマンではないような雰囲気を持っていた。
 その雰囲気で、なんとなく記憶に残っていたのである。
 これが、6月初旬の頃。
 その時、直沢多喜子は、平成錦秋大学の2回生であった。

 そもそも、直沢多喜子が生まれ育ったのは広島であった。
 極端な言い方をすれば、大阪から東へは、行ったことがなかったのである。
 平成錦秋大学に合格して、初めて、東京方面へ出てきたのだ。
 平成錦秋大学は、神奈川県の東京寄りにある。
 文科系が強い大学であった。
 例えば、藤川昭太郎という名前の教授がいる。
 彼は、『源氏物語』の第一人者であった。
 国文学の世界で、知らない者はいない。
 なお、実力はともかく、いちばん有名ということであれば、桜小路悟一教授がいる。
 国文学の専門家ではない。
 数学者である。
 テレビに出ているので、顔や名前が知られているのだ。

 直沢多喜子は、藤川教授の『源氏物語』に惹かれて、平成錦秋大学を受験した。
 2次の面接試験では、滔々と平安文学への愛を述べたのであった。
 そして、無事に合格して、大学生になったのである。
 平成錦秋大学の最寄りの駅は、私鉄の新茜が丘である。
 そこから、大学方面へ、バスが出ているのだ。
 直沢多喜子は、新茜が丘にワンルームマンションを借りた。
 マンションの契約をして、生活道具を揃え、そして入学式となった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録3《女子学生多喜子》<全2話> 第1話第2話

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