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ラブストーリー

Love cannot be compelled 6

   

未だ恐怖心が抜けない蘭は、信長に付き添われ、あの事件から二日後辞表を出しに行った。
突然の退職に部署がざわめいたが、蘭はただ悟を視界に入れないよう努めた。
心配した千穂には、後から連絡するとその場を去ったのだが、新たな不安が蘭の心を覆いだした…。

 

 翌朝、目を覚ました蘭は、既に信長の姿が無い事に慌てた。
 ガバッと布団を捲くって起き上がると、ベッドから下りて隣のリビングに駆け込んだ。すると、逆に驚いた信長が、顔を険しくして蘭に駆け寄った。
「どうしたっ…、蘭」
 一瞬思考が働かず、自分が何をしているのか分からなくなっていた蘭は、何度か視線を彷徨わせてから、信長を見詰めた。
「……ごめっ、何、アタシっ……」
 酷く不安な気持ちで床に視線を落とすと、信長の腕に抱き寄せられて、「大丈夫だ」と囁かれると、訳の分からぬ不安から解放された。
「ごめん……」
「怖い夢でも見たのか?」
 意地悪っぽい声が返ってくるのに、その問いにゆるゆると首を横に振った。
「分かんない。でも…、信長が……いなかった」
 そう言うと、「可愛い事言うな」と額にキスが落とされる。それにくすぐったい顔をしながらも、安心しきっている自分に気付いた蘭は、そのまま信長に凭れた。
「ごめん……。昨日は言わなかったけど…、怖いんだ……」
「何が」
「一人歩きが……」
 そう呟いた蘭にクスッと笑った信長は、そっと髪を撫でながら「一人は無い」と言い切った。
「お前を一人歩きなどさせるわけがないだろ。常に俺が送迎する。それ以外に不安があるのか?」
 強い声色でそう言われれば、ふと気持ちが軽くなった。不安があるかと聞かれても、今は『ない』と言い切れるほどに、信長の言葉に勇気をもらった気がした…。

 

-ラブストーリー


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