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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録4 前篇

   

記録4《密室の秘密》

今回も短編です。
その前篇。

 

 死んだのは、林田剛という名前の男であった。
 マンションの1室で、死んでいるのが発見されたのである。
 林田剛は、ある暴力団が雇った殺し屋であった。
 ようやく警察が住居を発見し、マンションへ来たのである。
 管理人は、何事ならん、という表情をしている。
「501号室は、林田剛という者の部屋だな?」
「そうですが、何か……」
「部屋にいるかどうか、分かるか?」
「いると思いますよ。2日前に帰ってきたのは見ています。それ以降は、出かけていませんから」
「よし」
 警察が、501号室のチャイムを鳴らしても、応答がない。
 鍵は閉まっている。
 鍵を開けると、ドアチェーンが、かかっていた。
 ドアチェーンを切る。
 そして、部屋の真ん中で死んでいる林田剛を発見したのであった。
 死後、2日ほど。
 自然死?
 そうではなかった。
 首筋に、吹き矢の矢が刺さっていたのである。
 その矢に塗られた毒が、死亡原因であった。
 もちろん、誰が、どうやって矢を刺したのか、が問題である。
 とくに問題なのは、どうやって、である。
 なぜなら、ドアは、鍵が閉まっていて、その上ドアチェーンもかかっている。
 つまりは密室殺人なのであった。
 こういう密室殺人の謎が解けるのは、天才数学者の桜小路悟一くらいであろう。
 もっとも、〈天才〉は自称なのであるが。
 だが、桜小路悟一は、不在であった。

 桜小路悟一は、平成錦秋大学の教授である。
 だから、仕事の第一は、大学での教育であった。
 また、大学教授は研究者でもある。
 彼の研究テーマは、〈共形接続非可換幾何〉である。
 この言葉が理解できるのは、日本広しといえども、30人はいないであろう。
 だが、桜小路悟一の活躍は、これだけに収まらなかった。
 彼は、教育の普及活動に、とても熱心なのであった。
 毎週のようにテレビに出て、数学の普及につとめているのである。
 もちろん、多額のギャラが入ってくる。
 だがそれは、単なる副産物でしかない。
 さらに桜小路悟一は、和算にも興味を持っていた。
 和算とは、江戸時代に流行った数学である。
 鎖国状態の日本では、西洋とは無縁の、独自の数学が発達したのであった。
 ある事件をきっかけとして、和算に興味を持ち、研究を始めたのである。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録4《密室の秘密》<全2話> 第1話第2話
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