幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

Love cannot be compelled 8

   

ふと目が覚めた場所は、社長室だった。
視線を動かせば、デスクで電話を掛けている信長が見える。その話している内容を聞いて、蘭は物凄い罪悪感に陥った。
自分が信長の仕事を邪魔している、そう自身で受け入れた時、蘭の気持ちが変化した…。

 

 ふと眠っていたと気付いて、重たい瞼を上げた蘭は、見慣れない天井に顔を顰めた。
(どこだろう…、ここ……)
「……分かった。頼んだ。……あぁ、すまない」
 信長の声が聞こえて、蘭はゆっくりと瞬きしてから目を動かした。すると、デスクの電話を取りながら、誰かと話している信長の姿が見えて、しばらく見詰めていた。
「先方には、謝罪と、近々食事の予定を立ててくれ。……あぁ、悪かった。……頼む」
 ふぅっと溜息を零して、受話器を置いた信長に、蘭は一気に後悔の念に襲われた。自分が起こした軽率な行動が、信長の仕事に影響をもたらしたのだ。
 会社を飛び出してからの予定が全て狂ったのだろう。その埋め合わせをしているのだ。それを聞いて、蘭は心の中で「ごめんなさい」と謝った。そして、千穂に言われた言葉をしっかり自分に叩き込んだ。
(こんな事で、信長の足を引っ張っちゃダメだ……。ちゃんと信長の事、信じて…包んであげなきゃ……。信長の事を想うなら……、一時の感情で動いちゃダメなんだ……)
 横たわっている体をゆっくりと起こした蘭は、それに気付いて振り向いた信長を真っ直ぐに見詰めた。
「……蘭、気付いたのか」
 フッと疲れた笑みを零して近づいてきた信長に、蘭は腕を伸ばした。そして、腕を掴んで力一杯自分へと引き寄せた。
「おいっ……」
 体勢を崩して蘭に倒れこんできた信長を、蘭はしっかりと受け止めた。そして、その瞬間に込み上げてしまった涙を流しながら、ギュッと腕に力を込めた。
「……ごめんなさい。……仕事にまで、影響与えるなんて思わなくて……。嫉妬…したのっ……。アタシの事なんてっ、まったく気にしてくれなくてっ……、二人が、親しく話してるの見てっ…、アタシなんか、どうでもいい存在なんだって……」
 信長を抱き締めている腕が震えて、蘭はゆっくりと腕を引いた。
「エリカさんともっ…、そんな関係なのっ? 一度は、アンタと寝たのっ? そういう風に感じるくらいっ、親しく見えてっ……、アタシっ…、アタシっ……、過去にアンタが抱いた女全てにっ、憎しみしかないっ……!」
 両手で顔を覆って、蹲った。

 

-ラブストーリー