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ラブストーリー

ふたりの生活:一話

   

月島羽澄は親の事情で親戚の家に住むことになった。
引っ越し当日、姿を現したのは二十代半ばの男性で……。
糖度低めの歳の差ラブストーリー。
基本純愛。後半にはキスシーンありです。

 

 大学一年の春休み。
 荷造りはほぼ終了し、後は業者に荷物を引き渡す。その後に、大家さんに明け渡してこの家ともお別れとなる。
 段ボールを積まれた荷物がある部屋を見渡し、しみじみと感傷に浸る。
 私、月島羽澄は親戚の家に引っ越すこととなった。
「親戚の人、まだ来ないのかなぁ? 住所も電話番号も教えてもらってないし、明け渡しの時間に行くとかってあり得ないよ。先に引っ越し業者が来たらどうするの?」
 父を経由して親戚の人とコンタクトをとっていたのに、今日の今日まで連絡なし。ただ、明け渡しの日と時間だけを聞かれ、それでお終い。
 今後一緒に暮らす人間に対しての対応ではない、よね? 普通、こっちの連絡先を尋ねたら相手も連絡先を教えるのが礼儀である。
 なのに、親戚はうんともすんとも言ってこない。父に聞いても、分からないの一点張り。苛立ちで脳味噌が爆発しそうな日々が続き、引っ越し当日まで音沙汰なし。
 せめて住所だけでもメールで知らせてくれてもいいじゃない。分からないことだらけの新生活には不安がつきものなんだから。
 あ……もしかして、盥回しにされるフラグが成立する?
 駄目ならはっきりと断ってちょうだいよ。ギリギリまで希望を引っ張って、わたしが落胆する姿でも拝みたいのかな。
 なんにせよ、明け渡しの時間まで残り一時間を切った。そろそろ業者さんが荷物を取りに来る頃、どうすればいいのよ、この状況!
 呼び鈴が鳴らされ、勝手に玄関が開かれる。漸く椅子から腰を上げて、部屋と廊下を遮断するドアを開けた。
 西側に玄関がある部屋のため、太陽の逆行が眩し過ぎて目を細める。瞼の開閉を繰り返し、二メートル弱の廊下を進んでいく。
 そこには、グレーのカットソーにブラックのハードヘリンボーンデニム姿の男が立っていた。
 服装から年齢は二十代ぐらい。わたしが見上げる程の身長で、前髪は寝癖なのか外側にはねている。
 表情はやる気が削がれ切って、瞼が重く気だるそうだ。睡眠不足、もしくは日頃の疲れがどっと出ているように窺える。
 こんな姿の業者さんは、いない。わたしが依頼した引っ越し業者は、緑色の作業着におそろいの帽子を被っている。
 転勤や進学の引っ越し期間は大荷物を予想して、もう一人やって来るよね。格好は社員と同様の作業着に身を包んでいる。
 なら、この男性は一体何者?

 

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